青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~「-×-」~

ネタばれ注意!


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久し振りに渋谷のユーロスペースでレイトショーを見てきた。
作品は「-×-」(マイナスカケルマイナス)。監督は伊月肇という人で、今回の作品で初めて知った。
映画終りに今泉力哉監督、平波亘監督(すみません、彼らも初めて知りました)との対談があるとの事。これで1500円は安い。
上映時間21:00の10分前にロビーに着いたが、何という人の多さ!私は整理券3番だったのでかなりいい席で見ることができたが、開場は超満員だった。
前からユーロスペースは不思議なほど人が集まる映画館だと思っていたが、月曜夜9時のインディーズ映画で普通満員になるだろうか。期待に胸が膨らむ。

2003年の大阪が舞台。タクシードライバーの男と、夫婦が離婚し父親に引き取られた中学生の娘の二つの物語が交わるようで交わらない絶妙な感じで物語が進展していくヒューマンドラマである。この年の3月20日、アメリカによるイラク戦争が行われた。この映画は3月18、19、20日の三日間の出来事を描いている。
2003年、私もちょうど映画の登場人物と同じ中学3年生だった。あの頃の懐かしい思い出が蘇ってくる。

私はこの作品を見て「なんかおかしいな」「みんな他人事だな」と感じた。
テレビやラジオでイラク戦争開始が迫ることを伝えるアナウンサーの声が物語の途中途中で挟まれるのだが、ものすごく重大なニュースであるはずなのに、まるで天気予報を伝えるかのように聞こえる。それは、ニュースを聞きながらもどこか他人事で、変わらぬ日常を過ごす日本人が描かれているからなおさら引き立つのだろう。それだけにニュースを淡々と伝え、その次のニュースが上野動物園の開園123年だと平気で言うアナウンサーの声が恐ろしかった。
どこか他人事。このことについて私も考えたことがある。上京したての頃、東京の何もかもが新鮮だった私は
人身事故による電車の遅延情報の多さに驚いていた。しかし、暮らし慣れている人は「いつものことだよ」となんともなさそうに言い、「遅刻したらどうすんだよ」と平気で言った。
あまりにも無頓着な言葉に「人が一人死んでんだぞ!?」と言いたくなったものだが、上京して早6年。今では他人事のように何も考えなくなっている自分がそこにいた。慣れとは恐ろしいものである。
日常を世界の全てだと思ってはいけないと感じる。ついつい何もなかったかのように無関心に陥りやすくなってしまう。日常も奇跡の連続なのだ。
様々な場所で物語が交差し、新たな物語を生んでいる。そのことに鈍感になってはならない。
日常の中に非日常が潜んでいることを再認識させらた。

映像も魅力的だった。長回しのカットを多用しているが、ダラダラとセリフを言うのではなく、人が微妙に立ち位置を変えたり物が動くことで全然飽きさせない。
印象に残っているのは二つある。一つは父と娘が奥の部屋で会話している間に襖を隔ててあったところ。もう一つは父娘の食事のシーンで父が座っているのだけが映っており、対面して座っているはずの娘の姿は壁に隠れて見えなかったところ。二つのシーンとも襖を途中で動かしたり、娘が見えない場所から椅子を動かしたりして面白い映像に仕上がっていた。
また、演技も良かった。セリフの間に独特の“間”があることで、リアルな親子関係、友人関係が描かれていた。特に、友人とのキャッチボールのシーンから、学校の屋上に忍び込んだことがバレてしまうまでのシーンはまるで本当の友達同士が語り合っているかのようで、主人公の話を他人事から自分の事として受け入れてくれた友人のセリフ、表情にはとても感動した。

この作品は2007年に撮られたそうで、長い時間温めていたらしい。監督たちのトークの中で今泉力哉監督が「3・11の映画を取ろうと思っている。どのくらいの期間を空ければしっくりくるのだろうかと思うことがある」との発言をした。確かにこういった重たいテーマで作品を作る時、期間を置き、温めるデリケートさも必要なのかと思った。

最後に、いまいちわからなかったところ(わからなさがこの映画の趣旨のような気もするが)。二つある。一つは、何故このタイトルにしたのか。考えてみたが、いまいちわからない。「マイナスの感情とマイナスの感情が掛け合わさればプラスになる」かと思ったが映画を観終わってから、その説明だとどうもしっくりこない。
もう一つは、タクシードライバーの方の話し。あれは私からすれば物語が交差していることがわかるだけであって、少女の物語と比べるといまいちそのストーリーの展開に欠けるというか・・・。
だれか見た人がいれば是非教えを請いたいものです。
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by komei115 | 2011-12-13 02:35 | Movie