青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~サラの鍵~

ネタばれなし

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タチアナ・ド・ロネの原作を基に、『マルセイユ・ヴァイス』のジル・パケ=ブランネール監督が映画化を果たした。第23回(去年)東京国際映画祭で公開され、最優秀監督賞・観客賞を受賞した作品。過去と現在の全く別のストーリーが徐々に交錯し、やがて一つの線となって結ばれたとき、真相が明らかになる喜びと、過酷な真実と向き合う辛さを同時に味わうだろう。

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上の国旗をご存じだろうか。1933年から1945年の間のナチスドイツの国旗である。1月30日、パウル・フォン・ヒンデンブルク大統領が、クルト・フォン・シュライヒャーに代わってアドルフ・ヒトラーを首相に任命したことが悲劇の始まりである。
非人道的な行為であるホロコースト(600万人以上ものユダヤ人大量殺戮)は負の歴史として人々の心に刻まれている。私は今までに映画では「ライフイズビューティフル」(イタリア)、「ツンドラーのリスト」(アメリカ)、「戦場のメリークリスマス」(フランス・ドイツ・ポーランド・イギリス)、書籍では「アンネの日記」でその歴史を学んできたが、今回の「サラの鍵」で、初めて1940年当時ドイツ占領下だったパリ含むフランス北部でも似たような迫害行為があったことを知った。
それが本作品の“キー”となる1942年7月15,16,17日のヴェルディヴ(冬季競輪場)事件である。ヴェルディブと聞くとフランスのアニメ映画「ベルヴィル・ランデブー」を思い出すが、発音が似てるせいか、何か関係があるのだろうか。
事件はいきなり起きる。パリに住むユダヤ人が一斉検挙され、ヴェルディブに送られた。まるで汚いものを見るかのような目つきでような目で見下す警察と市民。市民は口を閉ざし、見て見ぬふりをした。その中に、主人公の少女サラ含むスタルジンスキ家もいたが、幼い弟だけはかくれんぼと言って納屋の中に隠し、外から鍵をかけたため、無事であった。このシーンは「ライフイズビューティフル」の光景が脳裏に過った。
ヴェルディブに何千人ものユダヤ人を押し込み、食料も、水も、トイレもない状況で2,3日過ごさせた。そして、その後彼らは何台もの軍用車に乗せられ、各地の収容所に強制的に送られた。
この時の光景は、気分が悪くなるほど凄まじかった。当時の警察は、市民は何も思わなかったのか。この出来事はフランスの忌わしい汚点であり、決して忘れたり、封印したりしてはならない。一生の罪を背負って、事実を語り継いでいくべきである。
一方、現代ではパリに住むアメリカ人女性ジャーナリストのアンジェラがホロコーストについて特集記事を書こうと、色々と調査をする。現在のフランスの内務省がある場所にヴェルディブがあったのだと皮肉を言うシーンがあるのだが、私にとったらまさにショッキングなことである。内務省前を通ったことがあるからだ。そんなことは露ほども知らずに平気で近辺を撮ってうろついていた自分が嘆かわしい。
ある日、夫の祖父の時代から買ってあったマンションに移り住むために内装をリフォームしようとしていた時、その部屋の一画が昔ユダヤ人が済んでいたことを知る。そこから興味を持ったアンジェラはそこに住んでいたユダヤ人がその後どうなったのかを確かめようと真相を探っていく。

フランス語、英語、イタリア語が飛び交い、時間も場所もいきなり変わるため、集中し、頭の中を常に整理しておかないと置いていかれそうだ。しかし、少女と女性ジャーナリストのそれぞれ抱える感情の対比と、そこから浮かび上がる戦争がもたらしす傷跡の深さを、終始気になって見続けることができた。
良作のミステリーヒューマンドラマである。
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by komei115 | 2011-12-22 02:06 | Movie