青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~灼熱の魂~

ネタばれなし

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レバノン出身の劇作家ワジ・ムアワッドの原作をドゥニ・ヴィルヌーヴが監督と脚本を務め、カナダ・フランスで作成された映画である。アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされており、ヴェネチア国際映画祭最優秀作品賞、トロント国際映画祭最優秀カナダ映画賞、ロッテルダム国際映画祭観客賞、カナダジニー賞8部門制覇と凄まじい。
私は朝日新聞の広告でこの作品を知り、興味を持った。今現在はTOHOシネマズシャンテでしか公開されていないが、順次全国でロードショーが開かれるみたいだ。

ある日、カナダで暮らす双子の姉弟ジャンヌとシモンの母親ナワルがこの世を去る。それはどうやら娘と行ったプールでの出来事が大きかったようだ。虚空を見つめたまま死んでいった母。二人の子供には悲しみと疑問が漂う。後日、長年彼女を秘書として雇っていた公証人により、母の遺言が読み上げられる。その内容は、所在がわからない自分たちの父と兄に手紙を渡してほしいというものであった。

これは過去と現在の2つの視点で描かれ、短編のショートストーリーが連なって完成されたミステリードラマである。
正直、難しかった。決してストーリーが難しいわけではないのだが、私の前に中東の宗教戦争という問題が大きく立ちはだかる。日本人にとって無縁の宗教戦争。それは立ち入ることができず、理解しがたい問題だ。
架空のモノを貶し合って、殺し合う。それを正義という。ムスリムだからキリスト信者を殺すとか、キリスト信者だからムスリムに報復するとか、私にはどうしても理解できない。大学時代からずっと関心を持って取り組んできたテーマなのに何年勉強してもわからないのだ。彼らの熱狂的な神への信仰心は神の御心すらも忘れる程で、報復の連鎖は一向に続き、現在も根深い問題である。パレスチナなどは特に複雑で解決の糸口すら見いだせていない。この映画の様々な虐殺、凌辱なシーンは目を背けたくなる程で、更に悲痛なレクイエムのサウンドトラックが心に重く響き渡り、脳がぐらぐらと揺らされる。心が痛む。見たくない。しかし、これが現実でもあっているのだと思うと、無関心のままではいられない。こういった映画こそ大々的にメディアに流し、大衆に見られなければならないと思う。

ストーリーの方は、一人の女性の壮絶な人生とその軌跡を追って事実を明らかにしていく双子の姉弟が交互に映る。単なるミステリーかと思いきや、驚愕の真実が物語の最後に控えている。一瞬訳がわからなくなり、そして運命のあまりの非情さに声を失う程だ。良い意味で騙されたとでもいうべきだろうか。とにかく大どんでん返しに唖然とすること間違いない。
「1+1=1」というシモンの言葉にジャンヌは驚愕し、私は背筋が凍った。恐怖に戦慄し、同時に何らかの感動が湧き起こった。初めての感覚である。それは崇高さというか、畏れというか・・・。何とも表現し難いが、いけないことだと思いつつも壮絶な悲劇の中に一種の皮肉めいた美しさがあると感じてしまった。
後味が良いとは言えない作品だが、見終わった後に地に足がつかないような感覚に浸れる。余韻が続く。是非この感覚を味わってみてほしい。
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by komei115 | 2011-12-22 03:19 | Movie