青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~ミスター・ノーバディ~

ネタバレあり!

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未だかつてこのようなSFがあっただろうか。巧妙で緻密、そして、ただただ美しい時の断片に圧倒されることは間違いないだろう。



『トト・ザ・ヒーロー』『八日目』で知られるベルギーのジャコ・ヴァン・ドルマル監督による作品。「選択」とそれによる「運命」をテーマに描くSFファンタジー。美しい音楽と共に映し出される映像や、パズルのような展開を繰り広げる独特の世界観に酔いしれる。

あらすじは、2092年。科学の進歩により人類は死や老いと決別した。その中で、118歳のニモ・ノーバディ(ジャレッド・レトー)は唯一の命に限りがある人間となった。ニモは新聞記者の質問を受け、記憶をたどり昔のことを思い出す。そして、静かに自らの人生を語り始めた。9歳の少年が、母について行くか父の元に残るかの“選択”を迫られる。全てはこの日によって決まったのだった。

この映画を観たのは去年の春だったが、今でも鮮明に覚えている程自分にとって衝撃の強い作品だった。2時間15分という長編の部類に入るが、その時間の長さを感じさせないくらいのテンポの良さとミステリーに引き込まれた。いくつものパラレルワールドが枝葉のように展開され、時間・空間軸も疎らだ。一見、複雑かと思われるが、巧妙という方がしっくりくるほどよく計算されている。
この作品はSFだが、パラレルワールドは現実の私たちの人生の可能性の一つとして過去、現在、未来と那由多に存在している。そして、私たちは一瞬一瞬で訪れる無数の選択肢の中から一つを選び取り、「運命」として生きているのだ。
日常。それは何気なく繰り返されるように見えるも、果敢無い奇跡の連続である。私たちはそれぞれに映る世界の日常の中で、自分という主人公の舵取りをしていかなければならない。自分を幸せにするか、不幸にするか。それは自身の選択にかかっている。
「しかし、だからといって選択に臆することはない」とこの映画は訴えているように思う。選択の大切さよりも選択した人生をどう生き、どう老いて死んでいくか。これが重要なのだ。「どの人生も、同等に価値あるものである」とニモは老い、死を知らない人間たちをあざけ笑うように言う。その言葉は温かく、また、死があるからこそ生を味わえるのだと思わされた。だが、そう考えていた矢先、ラストで宇宙が収縮し、時間が逆戻りし始めるという大どんでん返し。ニモのしたたかな顔に一杯食わされたと笑いが込み上がる。逆回転で流れる映像はとても美しい。一見の価値ある作品である。
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by komei115 | 2012-01-22 21:55 | Movie