青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~裸の島~

ネタばれ注意

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水のない孤島。渇いた大地。厳しい環境の中で淡々と生活を続ける家族を切り取る。そこに一切の会話はないが、人間の持つ美しさがある。



現在99歳になる(今年4月で100歳)新藤兼人監督が監督・脚本・製作・美術を担当した人間ドラマ。
モスクワ国際映画祭グランプリ受賞、ベルリン映画祭や英国アカデミー賞などでも高評価を受けた作品である。

あらすじ
舞台は瀬戸内海。海に浮かぶ小さな孤島に四人家族が住んでいる。千太とトヨとその息子たち、太郎と次郎だ。島には水がない。農耕、畜産、自身の生活用水のために、毎日手漕ぎの小舟に乗って隣島へと水を汲みに行かねばならない。これが夫婦の日課である。子供たちは学校に通っているので、彼らを船で送り迎えするのも千太とトヨの仕事だ。会話もなく、変化のない日常が続いていた。しかしある日、太郎が高熱を出してしまう。千太は医者を探すのだが…。

孤島に生きる家族の姿を、一切の台詞を排して描いている。

初めはサイレントムービーかとも疑ったが、音はする。
いろんな音だ。風や木々の揺れ、波などの自然の音をはじめ、歩く音、咀嚼音、動物の鳴き声。特に水の音が印象深い。水の汲む音、大地に注ぐ音、木桶の中でちゃぷちゃぷと揺れる音。すべてが生きることに直結した音のみが聞こえてくる。そこにはまるで無駄がない。その音が生きる上での全てだと思った。自然の音、カメラワーク、役者の演技だけで90分淡々と生活を描く。私は言葉に頼り切っているが、それがこの映像の前ではことごとく無駄なもの、意味をなさないものだと思い知らされた。
観始めはこのような生活をやってみたいという憧れが半分を占めていたが、それも浅はかな考えであること気付かされる。水のない島での親子4人での生活。誰かが倒れるといった場合に何の手だてもない。家族四人の健康という条件のもとで成り立っている生活。それはぎりぎりで、過酷を極める。毎日舟を漕いで、本土の用水路から水を汲み、渇いた畑に水を与え、渇いた家畜に与え、渇いた自分たちで利用する。毎日がその繰り返し。怠ける、失敗することは許されない。死に結び付くからだ。
常に便利さ、快適さを求め、何かできる、何でもできると傲慢に陥った現代の私たちの生活ではありえないことである。しかし、今一度自身の生活を問いたい。私たちがいかに無駄な物に囲まれた生活をしているかを。私たちの大切にしている物の9割がきっと無駄なものだろう。金すらも人間社会が作り出した幻想、虚像に過ぎない。
生活とは習慣、つまり繰り返しであり、その上も下もない。皿を洗う。洗濯物を洗って、干して、畳む。風呂に入り、歯を磨く。晴耕雨読。途方もない繰り返しこそが生に直結する。そして、そこに人間本来の持つ美しさがあると信じている。
会話がない分、いろいろなことを自由に考えられる。
現代に生きる人に必見の映画である。
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by komei115 | 2012-02-10 22:42 | Movie