青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~一枚のハガキ~

ネタばれ注意

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戦争は全てのものを奪い、狂わす。人も、人の心も、人の未来も。二度と繰り返してはいけない最大の過ちである。





齢99歳という邦画界最高齢の現役映画監督である新藤兼人が自らの戦争体験を基に描く人間ドラマ。終戦間際、赤紙で招集された兵士100名のうち三度の籤引きによって60人、30人、4人と人選され計94名が戦死した。そして残った6名のうちのある男性にフォーカスを絞り、彼自身と戦死した戦友の家族の崩壊と再生への道のりを綴る。生き残った元兵士を、豊川悦司、その戦友の妻を大竹しのぶが演じる。監督自身を投影させた主人公をはじめとし、周囲の人々の戦争によってもたらされた苦悩が胸に突き刺さる。

あらすじ
太平洋戦争末期、中年兵として松山啓太(豊川悦司)含む100名が招集された。籤引きによって、戦友の森川定造(六平直政)はフィリピンに送られることになり、死を覚悟した彼は啓太に妻の友子(大竹しのぶ)が書いた一枚のハガキを託す。「もし生き延びることができたら、妻にハガキは読んだと伝えてくれ」という彼の頼みを啓太は承諾した。

「今年はお祭りですが あなたがいないので なんの風情もありません」
手紙に記された文字が紡ぎ出すその一言が実に悲しい。ほとんどの絶望と一縷の期待を込めて家族は兵士の帰還を待つ。しかし、帰還するのはよくて骨。ほとんどが木箱の中に紙切れ一枚入っているだけ。
声高らかに万歳三唱して兵士を送りだすシーンから、いきなり木箱を抱えて黙とうするシーンに切り替えることで、戦争によるあっけない人の死を描いた死新藤監督の手腕が光っている。一連の流れがあまりにもあっけなくて、ばからしくて、茶番の様で。戦争という大義名分はあるけども、蓋を開ければこんなものなのかと思ってしまう。しかし、それに反して遺族の苦しみはいつまでも続くのだ。大竹しのぶの発狂する演技が私の心をキリキリと締め付けた。
人選を籤で決めるという手段もまた悲しい。選ばれて死にに行く者、最後まで選ばれずに生き残った者だれもがたかが籤一つによって悲しく重たい運命を背負わされることになるのだ。誰も悪くないのに、みながみな悪者のように見えてしまう。終始苦虫を噛み潰したような顔で映画を見るしかなかった。
唯一救われたのが、最後の麦畑のシーンだった。たわわに実をつけた麦の穂が一面に広がり、風を受けて揺れている。畑を耕し、農作物を育て、家を建てる。こういった業は人間にしかなし得ない。人間の再生の姿に未来への希望が湧いた。
戦争とは人間の愚の極みであり、悲しみしか生まない最悪の産物である。いつまでも忘れてはならぬものであり、今世界各国で起きている戦争からも私たちは目を背けてはならない。
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by komei115 | 2012-02-14 18:48 | Movie