青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~人生はビギナーズ~

ネタばれ注意

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臆病な自分を一歩だけ前に。そうすればいつだってやり直せるし、どこからでも始められる。人生とは、たぶんそういう風にできている。



マイク・ミルズ監督が、自身と父との体験を基に脚本を書き上げ映画化された作品。「私はゲイだ」と同性愛をカミングアウトした父。38歳にして初めて恋をした息子。彼らの悩みながらも一歩を踏み出そうと奮闘する姿を通してうたう人生賛歌。『スター・ウォーズ』シリーズのユアン・マクレガーと『終着駅 トルストイ最後の旅』のクリストファー・プラマーが父子を演じ、『イングロリアス・バスターズ』のメラニー・ロランが共演する。殻を破ることで幸せをつかむ登場人物たちに、観る者は共感を引き起こされる。

あらすじ
父との思い出、母との思い出、そして現在の2003年が交互に話を紡ぎ出す。息子のオリヴァーに、ゲイであることをカミングアウトした父ハル。妻に先立たれ、自身もガンを宣告されるが、75歳にして新たな人生をスタートさせた。ハルが活き活きと輝く人生を送る一方、オリヴァーは38歳になっても、内気な性格からなかなか恋や友情を深めることができない。唯一の友達は犬のアーサー。しかし父が亡くなった後に仲間から呼び出されたパーティーで、運命の女性アナと出会った。二人の行く末とは・・・。

人はみな孤独だ。他人との意識の共有、完全なる理解などは不可能である。
それでも人は繋がりを求めてさまよう。自分を理解してほしいから、人を理解したいから。そうして言葉を交わし、肉体を交える。数々の失敗を繰り返し、思考錯誤を繰り返しながらお互いを理解していく。それが健全な人間関係だと思う。
しかし、うまく対人関係を築けない人は多い。嫌な自分を知られるのが恐くて、相手を受け止めるのが恐くて、傷つきたくなくて、自分から関係をあきらめる。うまく行きたいと願いつつ、自分からうまくいかないような行動を取ってしまう。主人公の父ハルの75歳までの人生も、先立った母の人生もそうだったし、その息子オリヴァーもそうだった。
人が内気になる理由には自分のコンプレックスが大きく関わってくる。この映画を見るうえで、父と母の戦争時代という境遇、ゲイ、ユダヤ人のことを知っておく必要がある。心身ともに貧しいながら、必死に前を向いて生きていかなければならなかった時代、ユダヤ人、ゲイなどは少数派だった。ユダヤ人差別は承知のこと、ゲイのことに関して言えば、LGBTのレインボーフラッグが作られ、ゲイプライド・ゲイパレードが始まった。政治家でゲイの権利活動家のハーヴェイ・ミルクが暗殺された。変革が常に求められる時代の中、特殊な環境だと社会からレッテルを張られ肩身の狭い思いをして生きてきた。その二人が妥協で結婚したのだから、うまく行くはずがないし、その息子も内気な性格になってしまうのも無理ないことだ。
そして、オリヴァーのことで言うと、彼の仕事で描く絵、壁の落書きの意味、2003年という時代を考えなければならない。彼の描く絵や落書きは今を否定し過去へと後退する様子が見受けられる。そして、時代。2001.9.11のテロ後、戦争へと突入したアメリカ。一年以上が経ち、ベトナム戦争以来の泥沼化に直面し始めるアメリカ国民には心の中で結束と不審が葛藤し、閉塞感、喪失感というものが漂っていたのではないだろうか。
たかがその人自身の心の問題ととらえるか、それとも時代背景までとらえるかによって見方が大きく変わってくる映画だ。
話が断片的に進んでいくが、この手法により「いつまでも過去を引きずって立ち直れない主人公の内気な心」を上手く表せている。この表現方法は正しかったと思う。他の人のレヴューに「見づらくて、話がよくわからなく、つまらない」というようなことが書かれていたが、私はそうは思わない。時間軸を整理してさえおけば見づらいものではない。寧ろそのくらい見てとれなくてどうすると問いたい。
最後のエンドマークの代わりに「Beginners」とタイトルが現れる。この瞬間私は思い知らされた。私たち誰もが人生のBeginnerであると。決して映画の世界だけじゃ終わらない。現実とも繋がっていて、誰でも一歩踏み出せばいつだって世界は輝き、開けるのだと。
私自身、オリヴァーにひどく共感できる部分がある。臆病な自分。傷つきやすい自分。
遠慮するな!恥じるな!殻を破れ!一歩を踏み出せ!と言われている気がした。
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by komei115 | 2012-02-18 23:03 | Movie