青い果実の実る頃には

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読書から学ぶもの ~タイタンの妖女~

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まるでキューブリックの映画を見ているようだった。53年という歳月が経っても、決して色褪せることなく一つの星のように光放つSF小説の最高傑作。




2007年に亡くなったカート・ヴォネガットが1953年に執筆した物語。当時は無名だったがその後の『スローターハウス5』や『猫のゆりかご』で脚光を浴び、それから再注目されるようになった作品である。日本では彼の作品の中で一番知名度が高いものと思われる。芸能事務所『タイタン』に所属している爆笑問題の太田光が「今までに出会った中で最高の物語」だと語ったことが大きい。

あらすじ
宇宙船で時間等曲率漏斗(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)線群の中に入ったことで時空間を越え宇宙のあらゆる時代や場所に波動現象として実体、非実体化を繰り返すこととなったウィンストン・ナイルズ・ラムファードとその愛犬カザック。59日ごとに地球に現れる彼は、ある計画を実行するために、神にも劣らぬ予言によって人類を先導してきた。その計画の最大の受難者となったのが全米一の大富豪マラカイ・コンスタントであった。彼はラムファードの予言通りに冨も名誉も記憶も失い、地球、火星、水星、そして土星の一衛星であるタイタンへと放浪させられた。彼の行く末と、ラムファードの計画、そして人類の究極の運命とは。

カートヴォネガットの作品を読むのは、『タイタンの妖女』が初めてだった。一年くらい前に購入したのだが、数ページ読んだだけで閉じの繰り返しで、全然先に進まなかった。
「わけがわからない」が第一印象で、作者は何を言わんとしているのだろうと読めなかった。掴みどころがなく、理解できないいらただしさがつまらないという気持ちに変わり、一時期断念した時期もあった。
しかし、「わからないことが本当の楽しさなのかもしれない」と感じた時、急にふっと頭の中に入るようになり、そこからのめり込む様に一気に読み進めることができた。
自身の経験から形成された常識や概念を越える物語は読むのに労力がいる。ここで「読み」の技術が試される。単に朗読していれば読んだとみなす読みなのか、読んで、吟味し、作者の意図したことを文章から理解できれば読みなのか。
私はめっきり後者で、全てを理解しようとし、そのために読むのが遅く、断念することも多い。この本では小難しく読むのではなく、自由に見る、つまり頭を柔らかくして目に入る全てを受け入れる技術がいることを知った。乱雑に散らばる点と点を初めから無理に繋ごうと努力するのではなく、点として受け入れ、見終わるとといつの間にか全体が線として浮かび上がるような、そんな抽象的な技術。映画ではそれができるのだが、読書は文章によってイメージさせるぶん難しい。
ごちゃごちゃと書いてしまったが、読み終わった時、物語の壮大さと人間の馬鹿らしさ、愛らしさが心に広がった。
思うに、この小説のテーマは「人間は自らの意思で全てを選択できるか」である。
「僕たちの行動は、実は操られてたんだってさ。だからこれまで僕らがたいそう素晴らしいと思ってきたことって、ぜーんぶ嘘。真っ赤な嘘なんだってさ!」なんてことを人類代表から告げられた日には人類はどうなるのだろうか。絶望するのだろうか、笑い転げるのだろうか、受け止めて生きるのだろうか、操縦者を見つけ出して殺すのだろうか。そしてその選択は人間が決めるのか、それともその選択すらも誰かに操られたものなのか。
わからない。全然わからないからこそ楽しい。SFならではの醍醐味で、身近で普遍的な問題にも気付かされる。
いろんな想像が膨らむ。私はきっと笑っちゃうんじゃないだろうか。
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by komei115 | 2012-02-25 22:56 | Reading&Music