青い果実の実る頃には

komei115.exblog.jp

項目に分けて日々思ったこと、書きたいことを自由に書いてます。意見、批判するコメントは大歓迎です。個人的な問い合わせはこちらまで。koumeipart115@yahoo.co.jp

ブログトップ

映画から学ぶもの ~ポエトリー アグネスの詩~

ネタばれ注意

b0215567_2128296.jpg


一篇の詩を書くために言葉を探し、紡いでいく。自分を受け入れながら、世界を受け入れながら。葛藤と苦悩の末に辿り着いた崇高な魂の一詩に思わず感嘆のため息が漏れてしまう。



『シークレット・サンシャイン』のイ・チャンドン監督の傑作。社会の片隅に生きる初老の女性が、困難に直面し苦しむ中一篇の詩に辿りつくまでの内外の旅を描いた作品である。主演のユン・ジョンヒは「無頼漢」以来16年ぶりの出演となる本作で、青龍映画賞、大鐘賞映画祭、アジア太平洋映画祭の主演女優賞を受賞。第63回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞を果たした。

あらすじ
66歳のミジャは、単身赴任で働く娘に代わって中学生の孫ジョンウクを一人で育てている。ある日、ミジャは右腕と物忘れの不調を感じ、病院で診察を受ける。病院から出ると、救急車の前で自殺した娘の亡骸を前に崩れ落ちる中年女性の姿を見た。帰宅し、ジョンウクに自殺した少女のことを尋ねるが、素っ気ない返事しか返ってこない。一方で、小学生のとき教師に詩人になるだろうと言われたことを覚えていたミジャは、詩作教室を受講する。ミジャは、“見ることがいちばん大事”という講師の言葉に従い、見たものについて感じたことを手帳に記していく。そんなとき、ジョンウクの友人ギボムの父親から連絡を受ける。その内容は・・・。

恵まれない人間を真摯に見つめ、緻密にして陰影深い物語を練り上げたイ・チャンドン監督の手腕が光った作品だった。人間の中に潜む清と濁を画中に流れる川のように巧みに表現してあり、それを一篇の詩で美しくも果敢無げに切り裂くのだから、とても他人事ではいられないような感覚に陥る。
ミジャは詩が書けなかった。書けなかったのは世界を見る目を持っていない、初期のアルツハイマーで言葉が浮かんでこない、などの理由ではない。初めから、ミジャの中に詩の原型があったのだ。試作教室の講師は言う。「なによりも難しいのは詩を書こうという決心をすることだ」と。詩は誰しもの心の中に存在している。意識と言う小手先だけで捻った詩ではなくて、無意識の中にある粗く、ごつごつと黒ずんだダイヤの原石が。それを意識に持って来る作業がとても難しく大変勇気がいる。
ミジャは自身の心の旅を通して、一篇の詩を書きあげる。そこには血を吐く程の辛く苦しい現実との戦いがあり、自分で一つの決意ができたからこそ成し遂げられた。彼女はアグネスになったのだ。
橋の上、川を見つめる少女の瞳がとても屈強で、印象深かった。ラスト10分の崇高さにただただうち震えていた。エンドロールで流れ続ける川の音が私の心にトクトクと沁み渡った。
[PR]
by komei115 | 2012-03-02 22:20 | Movie