青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~ 別離 ~

ネタばれ注意!

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いろんな感情が飛び交い、すれ違う。段々と心は離れゆく・・・



『彼女が消えた浜辺』などを製作した、イランの映画監督アスガー・ファルハディの最新作。あるイラン人夫婦に訪れる危機が竜巻のようにいろんな問題を包含しながら大きくなり、錯綜とした人間心理と人間社会の問題をも浮き彫りにしていく。
同作はベルリン国際映画祭金熊賞などを受賞した人間ドラマでシリアスサスペンスの要素を多く含む。謎や秘密が一つ明るみになる度に局面は天変地異と変わり、エンドロールまで画面から目が離せない。

あらすじ
一組の夫婦の離婚申請から物語は始まる。イランのテヘランで暮らすシミンとナデルには11歳になる娘がいた。妻シミンは娘の教育のために外国移住を、夫ナデルは老いた父のために残ると話がつかない。仲が悪いわけではないのに、夫婦は別居へ。それから歯車が狂い始め、物事は飛び火し、収拾がつかなくなってくる。

一組の家族の問題から見えてくるイラン独自の現代社会とその病巣。ひとつの事実といろんな真実。厳格でありつつも、どこか都合の良い宗教。庇護と憎しみがもたらす異なる証言。シリアスでスリリングでありながら、必死に自分の主張をぶつけ合う人の愛らしさに観ていて笑えてくる。
実に緻密で、面白い作品だ。イランの社会問題に向き合いながらも、普遍性にあふれ、奥の深い心理劇へぐいぐいと引きずり込む術は圧巻だ。
人間という生き物は、簡単なことでもまるで迷路のように物事を組み替える。結末の映像に映る一枚のドアの仕切りは海溝のごとく深く、近そうで限りなく遠い。
「別離」とは摩擦であり、結局のところ他との比較による歪んだ自己愛が生み出した他に対する想い遣りの欠如を指すのではないだろうか。
因習か自由か。理想か現実か。倫理か信条か。善か悪か。これは、私たちの日常にも常に潜んでいる普遍の問題テーマだ。
それらを抱える現代の社会病理の根幹にある淀んだ閉塞感。その現状に抗い必死に生きるゆえ、他者を傷つけてしまう人々が守り通そうとしたものとは何かを改めて見つめ、自問自答する必要があろう。
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by komei115 | 2012-04-11 23:07 | Movie