青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~KOTOKO~

ネタばれ注意!

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2012年4月7日よりスタート
詳しい映画情報はこちらからどうぞ
http://www.kotoko-movie.com/index2.html



これは何だ。言葉が霞んでうまく機能しない。ただただ衝撃。ただただ絶句。こみ上がる涙と鳥肌と震えは一体何の衝動なのか



『鉄男』シリーズや『六月の蛇』などで国際的にも高い評価を得ている塚本晋也がシンガーソングライターとして熱狂的人気を誇るCoccoとタッグを組んで放つ鬼才のヒューマンドラマ。幼い息子を愛する故に精神のバランスを崩してしまった未婚の母と、彼女に対して愛を貫く男の末路を過激に描く。「私にはモノが二つ見える」と原案を提供したCocco自身がヒロインを熱演しており、映画初主演とは思えないその奇抜な演技と圧巻なまでの存在感、そして彼女の魂の讃歌は息苦しいほどに心が締め付けられる。同作は2011年・第68回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で、同部門の最高賞にあたるオリゾンティ賞を受賞した。

あらすじ
トーキョーという暴力的な喧騒の中で生きることを強いられ、精神的な変調を抱えるようになってしまった琴子(Cocco)。彼女は未婚だが、乳児の息子がいて女手ひとつで育てている。息子を愛するが故に、愛し抜かなければいけないという強迫観念にとらわれ、奇行を繰り返してしまう彼女は幼児虐待を疑われてしまう。そして、沖縄にいる姉のもとに息子は預けられるた。
そんなある日、彼女のもとに小説家と名乗る田中(塚本晋也)という男が現われる。沖縄行きのバスで乗り合わせ、車中で歌を口ずさむkの序に惹かれたと語る田中を激しく避ける琴子。それでも思いを伝え続ける彼に彼女がとった行動は・・・。


観終わったとき、しばらく放心してしまった。映画が始まるまではどういう風にこの作品について書こうかイメージを膨らませていたのに、何もかも、全てが真っ白になった。言葉が出てこない感覚。全身には鳥肌が立ち、痙攣しているかのような痺れを覚える。
私は恐怖に怯えているのか。感動しているのか。怒っているのか。泣いているのか。
あまりの生のエネルギーをまざまざと見せつけられ、疲れが出たが興奮は冷めなかった。

一日時間を置くことで、ようやく気持ちの整理がついた。
まず注目すべきは「音」だ。都会の喧騒全てが凶器といえるまでに暴力的だ。そして都会に住む人々の狂気。彼らの全てが琴子を傷つける。彼女が恐怖で体がすくんでしまうように、視点を共有する観客も恐怖する。
リストカットで肉を切る音。他人への暴力への音。狂気の叫び。讃美歌。愛ゆえに狂い、狂おしいまでに愛おしい。自分の生と大切なモノの生とが痛みを伴いながら溶け合っていく。そうやって彼女は都会に「生きる」。
そして逆に、田舎での帰省生活は限りなく優しい音と時間が流れている。琴子も発作は起きず、調子が良い。しかし、映る全てが非現実的だ(しかし、その中でも息子が母よりも叔母の方を母として認識しているという現実が潜んでたりはするわけだが)。だからこそ琴子は都会へと戻らなければならない。この矛盾した不条理な感覚はとても共感できる。
そして「映像」。これも静と動のコントラストが凄まじいが、全体的に綺麗に仕上がっている。
一歩間違ったら単なるホラー映画でしかない。もし、主人公が男だったら、ただのドラッグ中毒者にしか映らなかっただろう。女性だから、それも母だからこの作品が成り立ったのだと思う。一児の母ならではの迫りくる不安、強迫観念。その象徴が「二人いる人間」であり、果てが兵士という皮を被った殺人者だろうか。暴力と痛み、恐怖から自分は子どもを守れるのか。究極に守るのであれば自分の手でいっそ殺した方が良いのではないか。
この点、coccoの演技は素晴らしく、原案者自らがヒロインを演じたことは大きい。本人の目にはこのような世界が広がっているのだろうか。敢えて欲を言うのであれば、琴子の視点で徹頭徹尾完結させてほしかった。一瞬でも作家の視点になってしまったのがもったいなく感じる。
しかしながら、coccoの世界観に注目して本人を起用し、見事な映像を切り取ることができた塚本晋也監督には絶賛という賛辞を贈りたい。

書いていて思う。これを観た人の中で、単なる異常者やホラーショーで終わってほしくないと。理解できなくても、恐ろしくても、目を背けずにありのままの生を観て欲しいと。しかし、言葉では表現しきれない。こんなにも良さを伝えたいのに、一割も伝えられていないという不甲斐なさ。もどかしさ。
これは是非とも映画館に足を運んで自身の目で見て確かめてほしい作品だ。集中し、研ぎ澄まされた感覚の中で、爆発に近い映像と音楽を体で受け止め、生の衝動を存分に味わってもらいたい。
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by komei115 | 2012-04-26 17:42 | Movie