青い果実の実る頃には

komei115.exblog.jp

項目に分けて日々思ったこと、書きたいことを自由に書いてます。意見、批判するコメントは大歓迎です。個人的な問い合わせはこちらまで。koumeipart115@yahoo.co.jp

ブログトップ

映画から学ぶもの ~川の底からこんにちは~

ネタばれ注意!

072.gif072.gif072.gif072.gif072.gif  4.6/5

b0215567_20463370.jpg


2009年公開作品(レンタル可)
映画サイトhttp://kawasoko.com/



所詮みんな中の下くらいの人間だ。それならそうと、開き直って世界に抗ってやろう。さあ、みなさん御一緒に。人生讃歌「川の底からこんにちは」



「剥き出しにっぽん」「ハラがコレなんで」の石井裕也監督による人生応援ムービー。主演は妻の満島ひかりが演じている。第19回ぴあフィルムフェスティバルスカラシップと第60回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門の招待作品に選ばれ、2010年、モントリオール・ファンタジア映画祭で、最優秀作品賞と最優秀女優賞(満島ひかり)をW受賞した。

あらすじ
上京して5年。派遣の仕事も恋愛も上手くいかずに一年ごとにコロコロと。それでも妥協した日々を送る佐和子(満島ひかり)は、父親が病で倒れたことから今付き合っている彼氏に無理やり急かされ帰郷。一人娘のために、父が営むしじみ加工工場の後を継ぐことになるが、従業員のおばさんたちには相手にされず、会社の経営は倒産寸前まで追い込まれていた。その上、一緒に工場の後継ぎになりたいと付いてきた彼氏にまで浮気されてしまう。


考えることをやめ、仕事も人生も妥協と惰性で生きてきたヒロインが実家に戻り、病気で倒れた父親に代わってしじみ加工工場の再建を任される。工場の従業員には相手にされず恋人に浮気され、人生のどん底を味わう主人公。
まったくもって笑えない話なのに、これでもかとシュールに攻め、観る者の脇腹をくすぐってくる。
脇役が特にいい味を出している。「こんな奴いるよな~」と思わせるような演出は監督の観察力の大きさも窺われる。一方で、主役の満島ひかりは、千変万化する表情が圧倒的な魅力を引きだたせており、もはや今最も輝いている女優の一人と言えるのではないだろうか。
夢や希望を持ちにくい世の中で、中途半端に生きてきた人々が逆境に立ち向かっていく姿は、ありがちなプロットながらも、ずば抜けたキャストの濃さで払拭しており、共感を誘う。
この映画で気になるのは、排泄物に対する執着と女性(特に母性)への屈折した憧憬である。
まず前者から述べたいが、冒頭で満島ひかりがエステで腸内洗浄されながら浮かべる放心の表情や、朝の勤行のように黙々と糞尿を畑にかける行為が印象的だ。汚いものをありのままに映すこと、それもその作業を女性が恥ずかしげもなくやる姿には、寧ろコペルニクス的転回の発想が窺えられる。
そして、それは後者へと繋がってくる。この作品において、父性はほとんど機能していない。佐和子の恋人の子連れの男は形だけの父親であり、大切にしようと思っていても、子どものことを何もわかっていない。口ばかりインテリぶったことを言い、実際は何も行動に移せず、女性にいいように翻弄される始末。しかし、男なんて一歩間違えば所詮こんなもんであろう。比べて女性は現実を見て、そのためにやることはどんな汚いことだってやる。女という武器を使って男を手玉にも取るし、家庭を支配することだってできる。全てが現実を生きることに直結している。そういった根性がなければ子どもなんて産めないだろう。だからこそ心情においての母性が発達してきたのだと思う。母の力は強大だ。
佐和子は子どもを産んでいないが、子連れで付いてきた恋人のふがいなさにあきれ果て、一発奮起する。恥なんてものは捨て、戦闘モードで、自転車に子供を乗せて幼稚園へと疾走する場面は、彼女に内在していた欠けた母性が一気に噴出した証しとして機能し、それは秀逸である。
また、彼女とおばちゃんたちの関係も見逃すことはできまい。彼女の家出の一因であった新しいお母さんの混濁したイメージを、笑いによって一種強引にも「ご都合主義的なハッピーエンド」として解消させてしまう荒業は、なかなかに不敵であり面白い。
しじみは、彼女たち自身だ。川の底で暮らし、アサリやハマグリなどほかの魚介類よりだいぶ日蔭の存在だ。それでも川の底には何がるか。汚い泥の中に含まれた豊富な栄養素だ。彼らはそれを十分に吸収し、エネルギーの詰まったしじみへと成長するのだ。「川の底でいいじゃないか。所詮中の下。何でもかかってこい」という姿勢がカタルシスとして噴出し、爽快にも似た感覚を引き起こされる。
[PR]
by komei115 | 2012-05-06 22:17 | Movie