青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~冷たい熱帯魚~

ネタばれ注意!

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2010年公開作品

さて、困ったことになった。この映画をどう評価しようか。問題作、衝撃作、18禁、エログロ、猟奇的・・・。しかしながら、この映画が滑稽に映ってしまう私の頭は異常なのだろうか



「愛のむきだし」「紀子の食卓」で話題となった園子温監督による人間の狂気と愛の痛みを描いた作品。実際の事件をベースとしたシリーズ「家賃3部作」の第一弾を作るにあたって、猟奇殺人事件(1993年に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件)に触発された監督が、同事件と酷似した物語を描くと同時に、事件に巻き込まれる一人の男が味わう深い心の闇に迫る。2010年第67回ヴェネチア国際映画祭、トロント国際映画祭、釜山国際映画祭で上映された。第36回報知映画賞・監督賞(園子温)、最優秀男優賞(でんでん)、第35回日本アカデミー賞・最優秀助演男優賞(でんでん)受賞。

あらすじ
熱帯魚店を営んでいる社本(吹越満)の家族関係はすでに冷え切っている。それは冒頭の大量のレトルト食品のようにも見える。ある日、彼は娘が起こした万引きによってスーパーに呼ばれる。そこで、人当たりが良く面倒見のいい同業者の村田(でんでん)と知り合い、やがて親しく付き合うようになるが・・・。


これまで、園子温監督の作品を何作品か見てきたわけだが、一番評価が難しい作品となった。
演技は抜群だ。これまでの作品もすごいが、それのさらに上をいっていると言っても過言ではない。とくにでんでんの演技は絶賛だ。彼が物語の主人公と言ってもいいくらいよくしゃべるのだが、あんな狂った殺人鬼の話でも「なるほど」と思え、魅力的にさえ映ってしまうのだから恐ろしい。なぜ、こんなにも彼の映画に出る役者たちは「剥き出し」の演技ができるのだろうか。上手い、下手といった問題ではない何をも恐れない狂気に満ちた演技には、ただただ脱帽するしかない。
問題は作品の物語的部分だ。
確かに、実際に起きた埼玉愛犬家連続殺人事件は、オウム事件で影を薄めたものの、その異常性をあぶり出した本作の出来は秀逸であるし、そこから見えてくるテーマは多くの人が抱え込んでいるであろう問題であり、私たちはその事実と向き合う必要がある。
この作品は横に逸れるような甘さなど一切ない。描かれる全てが「異常」であり、その状態のまま物語は平然と進むので段々と感覚が麻痺してくる。殺人そのものが無感動になり、寧ろある種の「滑稽さ」だけが残ってなぜか笑ってしまう。真理を突き詰めているからこその恐ろしさと悲しさ、そして滑稽さがそこにある。それは、ブラックジョーク的な笑いに内在した「黒さ」ではなく、突き詰める事実の「黒さ」が滑稽さという異常さを生み出すのだ。狂気と滑稽さはあるところでは繋がっているのかもしれない。
しかし、ここまで書いておいてなんだが、はっきり言ってこんな映画は観ない方が身のためだ(大変失礼だが)。
汚らしいセックス、歪んだ愛、愛ゆえの狂気、救いの施されない結末、そして、しばらく食事ものどを通らなくなるようなグロテスクな犯行・・・。
徹底的なまでに後味の悪い作品。何より、狂ったエネルギーはホラーどころの比じゃないくらいに恐ろしい。幽霊などのスピリチュアルなものよりも人間の剥きだされた確かな狂気の方が恐ろしいと感じれる。
よくもまあ、こんなにも「暴力」と「醜さ」を描けたものだ。
グロテスクな映像を見ながら、食事をし、笑って観られた自分が一番異常なのかもしれないが、この作品を「秀逸作」とはどうしても呼びたくない。
矛盾してはいるが、高評価を与えるべき作品であると同時に、この作品が高い評価を得てしまうことにどうしても抵抗を感じてしまう。
実際に起こった事件であるし、それを滑稽さを生むまでの異常な「物語」としてOKを出してはならないという気持ちが強かった。
これは道徳に近い感覚だろう。
問題作には違いないが、私としたらあまりおすすめしたくない作品だ(気分が悪くならなければ是非とも観てもらいたいのだけれど)。
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by komei115 | 2012-05-07 23:20 | Movie