青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~海洋天堂~

ネタばれ注意!

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2011年公開作品(レンタル可)

父は海亀となった。限りない青の世界で、息子を背に乗せて父は大海原を渡る。どこまでも・・・



「北京ヴァイオリン」などで脚本を務めたシュエ・シャオルーが描く、自閉症の青年とその父親の物語。2010年に放映された中国・香港映画で日本公開は2011年。アクション俳優のジェット・リーが初めて挑んだ文芸作品でもある。

あらすじ
水族館勤務のシンチョン(ジェット・リー)は、21歳になる自閉症の息子ターフーを男手ひとつで大切に育ててきた。ある日シンチョンはガンで余命わずかと診断され、息子の将来を案じて心中を図る。だが、泳ぎの得意なターフーが海面に顔を出したため、シンチョンは息子に一人でも生きていけるよう教育することを決意する。


海と空が混じり合ったような何とも言えない綺麗な青一色の世界。そこに父と息子の乗る小舟だけが何ものにも染まれずポツネンと浮かんでいる。ここから物語は始まるのか・・・と思いきや、何やら雲行きがおかしい。自閉症の息子は笑顔でどこかに手を振っているのだが、父は重石のついたロープに二人の体を結びつける。そして、これから息子の大好きな素潜りへ行こうかとでも言うように息子と海の中に落ちていく。
突然のことに驚かされる。結末から物語が始まるのかと思ったが、そうではなく、泳ぎの上手いターフーは縄を解いて父共々生還してしまう。
初めから重々しいスタートとなった。自殺未遂までした二人は、これからどうにかして生きていかなければならないのだ。
しかし、なにも父親が介護放棄をして心中しようとしたわけではない。これまで15年以上息子を手塩にかけて育ててきた。模範的な父をも越える父であり続けた。
だが、自分がガンの宣告を受け、余命はあと僅か。妻は遠い昔に先立たれ、頼れる親戚も誰もいない。自分に好意を持ってくれる人もいるが、その人と再婚して迷惑をかけることもできない。自閉症の息子が、自分のいない世界で一人で生きていけるのかが不安になり、そんなつらい思いを息子にさせるならという思いで心中に及んだのだった。
これは彼の息子に対する愛ゆえの行為だ。
失敗して父は気づく。息子はちゃんと「生きたい」という意思表示をしたのだと。だから、失敗したのではなく、自分の考え方そのものが間違っていたのだと。
それから、二人で生きることを選んだ。息子に一人でも生きさせる方法を父は模索する。
養護学校、介護施設、保険会社をくまなく探した。自分の死後、息子を入れてくれる施設がないか。ここで、中国の福祉施設事情も見えてくる。日本の成人に対する社会福祉がどこまで行き届いているかは、恥ずかしながらよく分らないが(高水準であることを望みたい)、中国ではちゃんとしたサービスを提供してくれる福祉施設はほとんど無かった。民営でようやく押し進められてきているというところのようだ。実際に要介護者のいる家庭は世界共通でさぞかし大変な思いをされていることだろう。より良い福祉を目指す必要があるのはどこの国も同じだ。
生活のありとあらゆる仕組み、方法を何度も教え、いろんな人脈を築かせ、
一見、どこにでもありそうな感動のホームドラマだ。特に、24時間テレビはこのての話は好きだろう(失礼極まりないが)。
それでもこの作品が際立ったのは、どんなに悲惨な父と息子でも、温かいまなざしを持ってそっと見守るようにカメラに映しだされていること。また、健常者が障害者の気持ちに寄り添うシーンはどうしても上から目線に映ってしまうのだが、この作品では父が息子が見ている世界を自分も見てみようと息子がとっていた行動を真似るシーンは、障害者を越えた息子への愛くるしさがひしひしと伝わってくる。
そして、何よりも障害者を持つ家族の苦しみ、つらさもちゃんと描かれており、それでも絶望の淵から再生しようと立ち上がり、もがく人の姿には心が打たれる。
親とは、平凡にして偉大である。
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by komei115 | 2012-05-08 22:07 | Movie