青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~学校~

ネタばれ注意!

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1993年公開作品(レンタル可)

もし、あなたがこのタイトルを見て「青春ストーリーか」と思ったら、それは全くの思い違いである。日陰ながらに生きようともがく人たちを温かな目線で捉え、普遍のテーマには考えさせられる



「男はつらいよ」シリーズ、「武士の一分」「おとうと」等の山田洋次監督による、教育の在り方について見つめたドラマ。幅広い年代の生徒が集まる、とある東京下町の夜間中学校を舞台に、様々な境遇の生徒と教師の交流を描き、挫折や苦境から立ちあがる人々を描いている。松竹創業百周年記念作品。日本テレビ放送網開局四十年記念作品。芸術文化振興基金助成作品。文部省特選。

あらすじ
下町の一角にある夜間中学の教師の黒井(西田敏行)。卒業式も近づいたある日、卒業記念文集のための作文の授業を行う。原稿用紙にそれぞれの思いを綴る様々な職業、年齢の生徒たちの横顔を見ながら、黒井は彼らとの思い出を振り返る……。


何年も前から観よう観ようと思って全く見れずにいた作品。やっとのことで先日目的を達することができた。
夜間中学校に勤める黒井は、ある日校長に呼び出されて「そろそろ異動を」と薦められるも、「私は夜間に根を生やして、ある日フラッと尋ねてくる元生徒たちにも安心を与えてあげられる『古狸』のような存在になりたいんです」とつっぱねるような熱血(というよりも生徒への慈愛に満ちた)教師だ。黒井のクラスには働きながら夜間に通うカズ、中学校を不登校になったえり子、不良のみどり、日本の社会になかなか馴染めない中国人の張、焼肉屋を経営するオモニ、脳性麻痺で言葉の不自由な修、そして長年の肉体労働で身体を酷使した競馬好きのイノさんが生徒で、それぞれに違った環境で悩みを抱えながら夜間学校に通っている。
「学校」というタイトルだからつい、子どもたちを想定してしまったが、その枠にとらわれない幅広い年齢層の生徒を描いていたことが衝撃だった。
そして、同時にそれはある問題が提起されることとなる。つまり、夜間学校に通う生徒という時点で日陰に生きる者たちであるということだ。在日朝鮮人だったり、中国人だったり、義務教育を受けてない者だったり。そういった人たちのために門徒を開き、温かく迎えて卒業や就職の手助けをする教師たちの奮闘と生徒たちとの交流が温かく描かれており、「学校」に年齢なんて関係ない、人間はいつからだって学べられるのだということを痛感させられたし、そういったマイノリティにも目を向けれて、だれでもチャンスを掴めるような社会の発展を願いたくなった。
また、作中に一つの問題提起がなされる。「幸福とは何か」。普遍的なテーマでありつつも、この問いかけは私の胸に響いた。
それは、1993年、バブル崩壊前後の日本。GDPで世界2位まで上りつめ、豊かさの絶頂のさなかだからこそ深く考えさせられる言葉だったのかもしれない。そして、日陰に生き、学がない者たちが必死に考えたからこそ響いたのだ。そこから「学校の在り方って何なんだろう。学ぶことの意味って何なんだろう」と考えを深めていく生徒たちは、学校で最も学ばなければならないもの(考えようとする意思)を見事に習得したといえるだろう。
この映画は実話をもとにして作られている。下敷きになったのは、松崎運之助著の『青春 夜間中学界隈』である。田中邦衛演じるイノさん(猪田)のモデルは実在の井上という生徒であり、映画のエピソード(競馬の話、医学部生に夜間中学を紹介された話、急病で死去した話など)もほぼ事実である。
映画公開によって、夜間中学校は一挙に知名度が高まった。
非常に感銘を受けた映画だ。
そして、流れる音楽はどこかノスタルジーを感じさせられる。



ノスタルジーで思い出すことがある。山田洋次監督の作品は「説教くさい」という意見も聞くが、私はそこまで気にならない。寧ろ、説教くらいで丁度いいんじゃないかなって思う。確かに「今どきの若いもんは」と年上の方に言われたくはないが、「古き良き時代」という昔も本当にあったのではないかと思う。実際にその時代が魅力的に映ってしまうこともあるくらいだ。
しかし、その頃に立ち返る方が良いとは決して思わない。過去は過去で多くの過ちがあっただろうし、前よりも個人がいろんな視点で物事を考え、そして気軽に発信できるような社会となった現在のほうが未来の展望の可能性は大きいと思う。
古い時代との付き合い方。それは、私たちが道を踏み外したとき、道に迷ったときにはじめて「初心に返る」という意味で機能させていくべきだろう。
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by komei115 | 2012-05-12 22:46 | Movie