青い果実の実る頃には

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映画 「フード・インク」と「ありあまるごちそう」から学ぶもの まとめ



私たち日本人が1年間に食べる肉(牛・豚・鳥)は約300万トン。だれもが毎日のように食べている膨大な量の肉、肉、肉。しかし、そもそも肉となる家畜は、どこで生まれ、育てられ、パックとなって店に並ぶのか。知っているようで、実は全くといって知らない。
現代の食料生産事情がここにある。私たち消費者が、見たくないものを排除し、できるだけ手間がかからないことを望んだ結果、視野がものすごく狭くなってしまったことを認めざるを得ない。

この2作品を見ると、出さずにはいられないのが「いのちの食べ方」という映画だ。少し紹介をしておきたい。
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2006年製作(日本では2007年に公開。レンタル可)
本作は、オーストリアのニコラウス・ゲイハルター監督がおよそ2年間をかけて取材・撮影したドキュメンタリーである。世界中の人の食を担うため、野菜や果物だけでなく、家畜や魚でさえも大規模な機械化によって生産・管理せざるをえない現代社会の実情が映しだされている。牛、鶏、豚、魚、野菜など、料理の元が生まれてから殺されて加工されるまでの一部始終が、一切のナレーションを省いた美しい映像で、淡々と描写されていくさまは、リアルに胸に迫ってくる。

さて、これらの「食」にまつわる映画から私たちは何を考えるべきか。
思うに、食物に対する畏敬の念を持つことと、それを生み出す現場の生産者達の姿をこの目に捉えることではないだろうか。

まずは前者について。
以前テレビのニュースで、とある中学校の家庭科実習で育てた鶏を調理するという特集をみた。泣き叫ぶ子ども達。血まみれのエプロン。その光景を巡っていろいろと賛否両論があった。映画「ブタがいた教室」も、いのちを食すというテーマで記憶に新しい。
自分の手で刃を振るって家畜を殺し、それを料理しろとは言わないし、実際にやる必要性はこのご時世にはほとんどないと言っていい(サバイバル訓練をするのなら別だが)。精肉店や八百屋、スーパー、どこで買っても、何を買っても構わない。ただ、動物と肉との間に見えないカーテンが掛かった今日、そこに並べられた肉や魚の切り身を見て「食」を感じられる敏感さ、いのちと肉を直結できる感覚は持っていてほしい。だからこそ、機械でいのちが肉へと解体されていく光景は見ておくべきだ。
一昔前は一般家庭にも家畜がいて、それを食とする光景は当たり前のものだった。それが今は徹底した消費者へと移ってしまった私たちは、平気で肉を食べているくせに「殺すのはかわいそうだから」といって、はなから見るのを拒絶するのはおかしい。決して目をそらしてはならない。逆に「食材」と「提供者」に失礼である。
これらの映画を見たら、今の食事情のあらゆる問題に対して興味を持てるはずだ。
例えば一つ挙げるなら「食文化」。犬を食べる、イルカを食べる、クジラを食べる。ほとんどの人が普段、というか一生口にしないと思われるそれらの「食」は一見普通の「食」と関連性がないと思われる。しかし、「食」にもそれぞれ土地の歴史があるわけであって、あまり食さないものを食べるという人々を肉を食べる私たちが決して否定してはならない。菜食主義者ならまだしも、「あの動物は食べていいけど、この動物は食べてはならない」などという本末転倒的な動物愛護論を醸し出す人間にはなりたくないものだ。

次に後者について。
私たちの食を支えてくれている、農、畜、水産業の人々、それも現場で働いている「食の提供者」を見て、彼らからの恩恵で生かされている私たち消費者を自覚し、国の身勝手な判断によって危機に瀕している農家の人々のことをもっと考えるべきではないだろうか。
折しも私たちの住む日本では、菅内閣が「平成の開国」と称して、TPP(環太平洋経済協力パートナーシップ協定)への参加を打診し、それを継いだ野田内閣は参加表明をしている。
TPPとは加盟国の間で関税を撤廃して、自由貿易を推進しようという取り決めだ。現在12カ国が加盟(日本、メキシコ、カナダの表明国も含む)している。
TPPへの参加で農作物の輸入が自由化すれば、私たちの食生活も「より安く、いつでも食べたいものを提供する」という、グローバルな食のシステムの激しい洗礼を浴びることになるだろう。
それで何が失われるか。科学による大量生産によって食材に旬が消え、個性のない同じ形をした食材が並ぶ。土の匂い、肉や魚の臭みが漂っていた商店街や横町が消え、パックや缶に詰められた食材の味は何を食べているのか分らなくさせ、喜びは消失する。日本ならではの安全性の高い食を提供してくれていた農家が衰退し、安いが得体の知れない食品を平気で体に取り込んでしまう危険性を孕む。
私たち人間は、より良く、便利で、豊かな世界を追い求めてきたはずが、同時に飢えや貧富の格差に加え、食への不安やココロの貧しささえも生み出すという深い矛盾の上に立たされている。
さて、世界はここまできてしまった。私たちはこれからどのような形の未来を選択していけばよいのだろうか。この映画を観ながら、じっくりと考えてみてはどうだろうか。

今後もTPP含む「食」にまつわる話をどんどん載せていきたい。個人にかかわる大事な話。だからこそ、一人でも多くの関心を。
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by komei115 | 2012-05-26 22:54 | Movie