青い果実の実る頃には

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映画から学ぶもの ~バグダッド・カフェ~


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1987年制作(レンタル可)



非常にシンプルな物語の中に、人々の営み、交流、そして心の変化やがくっきりと描かれている。そして「幸せとは何ぞや」と見る者に押し付けずに問いかけてくる。映画の醍醐味や可能性を改めて感じられる本作はまさに「映画から学ぶもの」に相応しい




ドイツ出身のパーシー・アドロン監督による、アメリカ西部の砂漠のモーテルに集まる個性的な人々と、ドイツから来た旅行者の交流を描き、世界中に熱狂的なファンを生み出した傑作『バグダッド・カフェ』から20年。監督自らの手によって編集・調整されたニュー・ディレクターズ・カット版。美しい映像とともに鮮烈な印象を残す主題歌「コーリング・ユー」はアカデミー賞最優秀主題歌賞にノミネートされ、多くの人々を魅了した名曲である。

アメリカ西部の砂漠の真ん中にたたずむ寂れたモーテル『バグダッド・カフェ』には、変わり者ばかり集まり、いつも気だるいムードが漂っていた。女主人のブレンダもその日常にイライラと鬱憤が積み重なっていた。そんな時、夫とけんか別れしたドイツ人旅行者ジャスミンがふらりとこのモーテルにたどり着く。美しいとは言い難い体型と容姿とは裏腹に、彼女が現れてから、店に集う皆の心が段々と癒やされていく。


日本では1989年にシネマライズで初公開されて大ヒットし、当時のミニシアターブームを代表する一作となる。私が生まれて間もなくしてこのような映画が、今となってはよく足を運ぶシネマライズで公開されていたと知るとなにやら感慨深いものがある。

さて、映画にはいろんな面白さがある。地肉湧き踊るアクションだったり、手に汗握るスリルサスペンスだったり、笑い転げるコメディだったり、感動感涙のラブ・ストーリーだったり。そのどのジャンルにしろそれが劇的であればこそ、非日常性が増して見る者を魅了する。
本作はどうだろうか。この作品に派手さなんてものは一切ない。物語の展開もそうだし、登場人物もそう。なにしろ主人公が一番主人公らしくない容姿・体型をしている(失礼な話だが)。しかしながら、なんだろうか。見終わった後に余韻として残るこのじんわりと沁み入るような温かさや幸福感は。それでいて映画のシーンや曲の「コーリング・ユー」が鮮明にいつまでも頭の中でリフレインし、苦いほどに濃いコーヒーが無性に飲みたくなった。
同じ年に公開され、常に私のベスト3にランクインする映画『ニューシネマパラダイス』が「物語のラスト3分間で塞き止められていたいたものが解き放たれたような爆発的な感動を生む作品」だとしたら、この『バグダッド・カフェ』は「劇的ではないが、それでも確実に日常は変わり、登場人物たちの心の機微の変化に沁み入るように感動できる作品」とでも言えようか。

そして、決して言葉には出さないが、その変化を持ってして物語が私たちに問いかけてくる。「人にとっての癒しとは何だろうか」とか、「人にとっての喜びや幸福って何だろうか」などといったことだ。
それまでだらしなく汚れ、よどんでいたモーテルの空気が、一人の女性が来ておせっかいを焼くことによって変っていく。店の人たちも、旅行者の女性自身も働くことの喜びや人を楽しませることの充実感に満ちていく。それは、同じ仕事をやるにしても心地よく疲れを癒すおごそかで幸福な至福の時間へと変わっていくのだ。
癒しとは何だろうか。それは、要はそのきっかけとなる事象を自身がどう捕まえることができるかということに関わってくるのだろう。いや、能動的に捕まえるということではなく、身近に落ちてあったり、どこかからふわふわと飛んでくる何気ない幸せを、拾い上げ、両手を延べてそっと抱きかかえることなのだ。
それに気が付き、この時間をいつまでも大切にしたいと思うとき、人は初めて全てを認め、許し、自らが幸福だと思えるのかもしれない。
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by komei115 | 2012-10-03 18:38 | Movie