青い果実の実る頃には

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「愛、アムール」と「皺 しわ」から老いを見つめる その1


愛、アムール

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2013年3月9日より公開中
詳しくはhttp://www.ai-movie.jp/

「人生とはかくも長く、何と素晴らしい」。聡明な老夫婦が老いを見つめ、愛を貫く。その終焉とは・・・




いる。これは生物である以上誰もが通る道である。科学は進歩し、平均寿命がかなり伸びたとは言ってもいずれ死ぬ。人は最終的に己と愛する人の老いと死に向き合わなければならない。さて、今回紹介するこの二作品はそんな老いと死をテーマにした作品だ。


『愛、アムール』

『ファニーゲーム』や『白いリボン』を監督した鬼才ミヒャエル・ハネケによる、沈痛かつ重厚なタッチで追い詰められた老夫婦が見いだす究極の愛を描いたヒューマン・ドラマである。本作は第65回カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールに輝き、同監督は『白いリボン』に続き二回目の受賞を果たした。先月のアカデミー賞外国語賞にも選ばれた力作。

あらすじ
パリ在住の80代の夫婦ジョルジュとアンヌ。共に音楽教師で、娘は離れながらもミュージシャンとして活躍し、充実した日々を送っていた。ある日、教え子が開くコンサートに出向いた2人だが、そこでアンヌが病で倒れてしまう。病院に緊急搬送され、かろうじて死だけは免れたものの、半身まひという重い後遺症が残ってしまう。家に帰りたいというアンヌの強い願いから、自宅で彼女の介護を始めるジョルジュ。しかし、少しずつアンヌの症状は悪化していき、ついに死を選びたいと考えるようになり……。


音も背景もないタイトルロールが静かに流れ出す。それは厳粛で、館内に緊張感を漂わせていく。
どんな物語なのだろう。そう思っていた矢先に激しい音が響き渡り、予想のつかない展開に体はびくっと反応した。警官が扉をこじ開けると、次々に入っていく。何やら嫌な感じだ。
3分後、その予想は的中することになる。始まってすぐに私たちは物語の結末を知らされるのだ。最悪の結末を。
この家庭にいったい何が起きたというのか。何も知らないのに全部を知らされる。そんな悶々とした気持ちを胸に抱かされたまま物語は日々を遡っていく・・・。
ミヒャエル・ハネケ監督はオーストリア国籍の監督だが、本作品はフランス映画と勘違いしてしまうほど(実際にフランスが舞台なのではあるが)独特のフィルムノワールの世界をムンムンと醸している。前作『白いリボン』を観ると、監督自体そういった観客を突き放す、いや、突き落とすような傾向にあるとも思うし、多少なりとも意地は悪いのだろう。
しかし、全てを観終わってみると一つの気持ちが芽生えていることに気づく。それは、泉のように沸々と沸き立つ静かな感動だった。タイトル通り『愛』を、それも崇高なまでのものを監督が描いたことによって上手い具合に化学反応が起きているのだと思う。
老夫婦の間には、誰も立ち入ることのできない聖域のような美しさがあった。その二人を現実的に『老い』という奈落へと突き落とすことによって、皮肉にもその美しさは輝きを増し、究極的に物語は完成したのだ。「愛する」ということにおけるストーリーや人物たちの安っぽさは微塵も感じられない。失望という結末から始まった物語だが、結果的にそれが最上の効果をもたらしている。ほかの結末では、こうは感動しなかったであろう。
物語で一番印象に残ったシーンがある。窓から一羽の鳩が入ってくるシーンだ。以前外へと追い返したことがあったジョルジュだが、何を思ったのか鳩を毛布で捕まえて胸に抱き、しばらく考えて窓から鳩を解き放った。
それは、まさしく「解放」を意味しているのだろう。アンヌと、それからジョルジュ自身の心を。一つの愛の形であり、その愛は真意に最も近いのかもしれない。
愛はときに相手を束縛する。「愛するが故」というやつだ。そして、それは同時に自分の心も束縛してしまうことでもある。娘のエヴァが典型的である。離れて暮らす親を大切に思うからこそ、現状を知りもしないのに自分の考えを押し付けて親を傷つけた。そして理解できない親の言動に自分自身にも傷をつくった。
きっと、私たちの大半はエヴァと変わらないのだろう。自身もそうだが、ジョルジュの選択にもっと良い方法があったのではと不快に思った人も少なくないはずである。しかし、先にも述べたが私たち第三者には決して理解できない、踏み入ることのできない聖域が二人の間にはあるのだ。
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by komei115 | 2013-04-19 20:14 | Movie