青い果実の実る頃には

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項目に分けて日々思ったこと、書きたいことを自由に書いてます。意見、批判するコメントは大歓迎です。個人的な問い合わせはこちらまで。koumeipart115@yahoo.co.jp

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カテゴリ:Column( 66 )

日日之思慮 その65

【情けは人のためならず】と言う成句がある。「情けを人にかけておけば、それが巡り巡って結果的に自分に良い報いが来る」と言う意だ。したがって人に情けをかけることは良いことだとこの言葉は語っているのだが、近年では「情けをかけると、本人のためにならず、自立できなくなる」という意に誤った解釈をされていることが多い▼意味が揺れている言葉は成句に限らない。例えば【失笑】。「笑いも出ないほどあきれる」という意で用いられることが多いが、本来は「(愚かな言動に)こらえきれずに噴き出す」という意である。他にも、【にやける】「なよなよとした」、【姑息】「一時しのぎ」、【ぶぜん】「ぼんやり」、【おもむろに】「ゆっくりと」という本来の意を聞いて驚く人も多いのではないだろうか▼驚くのも無理はない。これらの言葉を用いる人の半数以上、特に若い世代の人は約8割が別の解釈をして日常会話にとり入れているからである。彼らの中ではそれが常識なのだ。逆に文化庁の国語世論調査で本来の意を使う人は3割程度。誤った解釈が本来の意を覆すことは多々あるのだ▼こうなってくると、どっちが正しいのかはっきりとは断言しにくい。「どこからが誤用」で御用!(申し訳ない)かの線引きはますます難しくなってくる。誤解を理解すべきかどうか、悩ましいところである▼意味が揺らいでしまうのは言葉が生きている証でもあろう。近今は会話だけでなくメールやツイッター等SNSで文章を書く機会が増えており、多種多様な用語や文字が生まれては消えていく。対応するためには敏感である必要がある▼しかし、今の潮流にだけ乗っかって、本来持つ言葉の意味を忘れていってしまうのは何とも寂しいことである。「情けを人にかけられない」人が増えるのも困ろう。たかが言葉、されど言葉。大事な意思疎通・伝達のツールなだけに、普段から意識して言葉を使用するように心がけたいものだ。
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by komei115 | 2012-10-21 03:23 | Column

日日是思慮 その64

「TED」をご存じだろうか。アメリカのカリフォルニア州モントレーで年一回、講演会を主催しているグループだ。非常に著名な人物から無名の人まで、学術・エンターテイメント・デザインなど多岐にわたった様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう。講演会に出席するには年会費7,500ドルもの大金を支払ってTEDの会員になる必要があり、会場には社長やセレブが犇めいている▼さすがアメリカと言いたい。聞く方も鮮麗されているならしゃべる方も同じく鮮麗されている。軽やかにジョークを飛ばして観客を笑わせつつも、己が研究・追求したテーマを斬新なアイデアとともに披露していく。自信のある顔つきには観る者を安心させ、軽快なプレゼンテーション力には聞いていて舌を巻く▼自分を最大限にアピールする「プレゼン力」。日本人はどうだろう。偏見で申し訳ないが、相手の舌を巻かせるどころか自分の舌を噛む人が多いんじゃないだろうか。しかし、「なあなあで」「ツーツーカーカー」「男は黙ってサッポロビール」といった寡黙さに反して口下手な我々特に日本の男性陣に対し、今は学生にも社会人にも求められる「プレゼン力」が求められる時代に突入している▼特に、ビジネスの世界では「プレゼン力」に加え「英語力」も必要になっている。先日、楽天が社内では英語を標準語に定めたというニュースを聞いた。英語が苦手な社員にとったら何としてでも上手くなりたいという半面慣れ親しんだ日本語が使えないという地獄のような辛さに耐えられないという葛藤があるのではないだろうか▼日本人は国際社会においてプレゼン能力が落ちる。そこに英語が来てしまったら恐縮しきって、話半分に「YES」と言いくるめられてしまうのがオチだろう。私は日本人に必要なのは「英語学習」の前に「プレゼン学習」もとい「自分の考えを吐露する学習」が先ではないかと思う▼まずは、自分の意見を表明する心地よさに触れ、見晴らしをクリアにするとともに伝える楽しさをしり、自分の考えに自信を持ちたい。そうすることで他人との意見の違いもはっきりし、ぶつかり、折り合いをつけることができる。以心伝心ではなく言葉によって人と繋がる。「わかってよ」じゃなくて「わかってもらう」精神で人に伝える努力が大きな糧となろう
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by komei115 | 2012-07-15 01:24 | Column

日日是思慮 その63

【時は金なり】とはいうが、時間とはいくら金を積んでも買えない金以上に大切で貴重なものだ。大人になればなるほど感じる「もう少し時間があれば・・・」「もっと時間を有効に使えれば・・・」という思い。一分、いや一秒でも無駄にはできない!・・・っとは言いながらも、なかなかに時間を浪費し続けてしまう私がいる▼当たり前だが、一日の時間は24時間だ(恒星日では23時間56分4.0905秒)。分で表すと1440分、秒で表すと86400秒となる。しかし、明日7月1日は3年半ぶりに8640“1”秒を刻む。「うるう秒」のためである。実際にはどうなるのかというと、午前8時59分59秒と午前9時0分0秒の間に「8時59分60秒」が挿入される▼なぜ、「うるう秒」なるものがあるのか。それは、極めて正確な原子時計で決まる標準時と、ほんのわずかずつ遅くなる地球の自転で決まる時刻との帳尻を合わせるためである。数年に一度、原子時計のほうに挿入される「一秒」が「うるう秒」となる▼一日は以前、地球の自転を基準に決められてきた。しかし、自転には不規則なふらつく動きがあり、このため一日あたり、およそ千分の一秒ずつ遅くなっている。原子時計の時刻と自転を基準とした天文的な時刻とのズレが生じることで、太陽が真南に来る時刻が微妙にずれてしまうことになる。そのために1972年からうるう秒によって補正が始まり、今回が25回目にあたる▼地球の公転は季節を生み、自転は時間を生んだ。では何故地球は自転を始めたか(公転は各自で調べてみて欲しい)。それは、地球という惑星が出来上がるまでに何度も小惑星同士がぶつかったり、擦れたりすることで衝撃が生まれて自転を始め、宇宙は摩擦がないためそのまま回り続けているからだと言われている。何とも丁度良いスピードをキープしながら約46億年も回り続けている所業はまさに奇跡といえよう。だからこそ、年々多少のズレも生じてくるわけだ▼しかしながら、実はうるう秒は世界規模で廃止論が高まってきている。不定期的に挿入されるため、コンピューターが誤作動する恐れがあるとされるからだ。この「一秒」は後何回も見られないかもしれない。たかが一秒、何ができるとも言えないが、この一秒の訪れを体感し、時間の重みや奇跡を再確認するのもまた味わい深いことかもしれない。
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by komei115 | 2012-06-30 01:46 | Column

日日是思慮 その62

「田植え」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべるか。私としてはその言葉通り水田に稲の苗を植えつける作業のことを指す言葉でしかないと思っていたし、多くの方もきっと私と同じ答え方をするのではないだろうか(そうであってほしい)▼しかし、今の若者はそうではないようだ。「田植え」とは「つけまつげを部分的につける」ことを意味する。部分的な「つけま」をつけることが田植えのように見えるそうで、「今日の田植えうまくいった」「田植えに時間かかってさ~」などと使っているらしい▼他にも「与謝野る」(ヘアスタイルが乱れている様子。与謝野晶子の「みだれ髪」から)、「おこ」(怒っていると軽い感じで言うこと)、「出オチ」(お笑い用語。最初がピークで後は痛々しい雰囲気になること)、「ソロ充」(一人で楽しむことができる人)などといった言葉が飛び交う。意味がわかっていないと、もうちんぷんかんぷんである▼若者言葉は常に流動する。そこには、いつの時代も大人に対する反抗や仲間内だけの共通言語としての意識が内在していよう。私が学生の頃は「KY」や「シュール」などの言葉が流行り、一昔前は「チョベリバ」や「チョーMM」など、その前になると「ナウい」「ヤング」になるのだろうか。いずれにせよ、その時代を象徴するような数多くの若者言葉が生まれては死語になっていった▼さて、最近の若者言葉を受けて、大学のゼミで若者言葉を一冊の本にまとめる作業をしているところもある。「親の世代にも若者言葉を知って欲しい」ということで、言葉を選定、分類して学生たちが解説を付けて発行、学内などに配るとのことだ。若者言葉から社会の風潮を掴んだりするのも面白いかもしれない▼しかし、言葉は文化の根底である。最近の流行語ばかりに目を奪われて多用すると、目上の人から「巧言令色、鮮し仁」という印象を与えることにもなりかねない。若者言葉もいいが、古き良き、美しく、清らかな言葉たちも少なからず知っておきたい。「那由多(なゆた)」、「玉響(たまゆら)」、「紐帯(ちゅうたい)」、「不知火(しらぬい)」や外来語の「麦酒(ビール)」、「珈琲(コーヒー)」など(以前「日本語の作法」 外山滋比古著 で述べたが)は今も死語にならずに輝きを放っている。
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by komei115 | 2012-06-24 22:37 | Column

日日是思慮 その61

昨日の台風が過ぎたかと思うと、今日はいきなり蒸し暑さを感じた。今年の夏の到来がもう間近に迫ってきている証拠だ。今年の暑さ対策はどうしようか。古き良き日本の和を感じられる生活もいいかもしれない。緑のカーテン、早朝の打ち水、風鈴、浴衣、団扇や扇子・・・。扇風機は長時間の使用、涼菓子・飲料水は食べ過ぎ飲み過ぎに注意したい▼夏は暑さと虫刺されが嫌だが、それを吹き飛ばすほどの風物詩は多い。海水浴や登山のレジャーを含めた旅行、夏の甲子園、花火、納涼船、ビアガーデン、祭りやフェス・カーニバル・・・。暑いからこそ外に出て、いろんな避暑地で人と遊び、事物に触れて感動する。それが夏の醍醐味かもしれない▼夏の風物詩の一つに「ホタル」があろう。ゲンジボタルにヘイケボタルという名前、「蛍の光、窓の雪」という蛍雪の功含む歌からもわかるように昔から夏の和の象徴として日本人に愛されてきた。私もホタルと聞くと「ホタルの墓」というジブリ映画で節子がホタルを手に掴むシーンを思い出し、幼い頃に家族で見たホタルの舞う景色、沖縄石垣諸島の竹富島で見たホタルの幼虫が小さいながらも力強く発光していたのを思い出す▼東京では、多摩動物公園が周辺で生息している地元のゲンジボタルの繁殖に成功し、昆虫園で展示を始めている。ゲンジボタルは生息地域によって東日本型と西日本型があることが知られている。東は4秒おきに発光し、西は2秒おきに発光と発光パターンが異なる。最近の研究でさらに細かく遺伝子のタイプが分れることも判明した▼「ホタルの光は安全の証明」。放射線に弱く、環境のバロメーターといわれるホタルの光で福島の復興をアピールしようと、福島県いわき市の小川に4日、東京の板橋区が同県大熊町で23年前に採取し繁殖させ続けたホタルの幼虫700匹が地元小学生の手で放流された。主催した地元商店会は7月に観賞会を予定しており「ホタルの光をみんなで見て、地域の安全を証明したい」としている▼しかし、 幼虫を提供したホタル生態環境館によると、ホタルは一定以上の放射線を浴びると細胞が破壊され、光らなくなるという。それなのにホタルに風評被害の緩和を託すのは少しかわいそうな気がする。それで本当に発光しなくなった日にはどうすればいいのか。それに、無理な放流によって、もともといた種と交雑してしまい遺伝的特徴が失われる可能性や、宅地開発による繁殖地の減少、種の絶滅の危険性も危惧したい。夏の風物詩を失わないためにも私たち人間の環境や生命への配慮が最重要となろう。
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by komei115 | 2012-06-20 23:45 | Column

日日是思慮 その60


今や国民的グループとなったAKB48。老若男女が先日の総選挙と呼ばれる投票で熱狂し(真相は不明だが。私は熱狂してるのは一部の男だけだと信じてやまない)、全国でテレビ中継されるほどだ。そして、ついにその波に乗ることのできなかった男がここにいる。彼女たちの可愛さが未だに良く理解できない。「あの、AKBって歌手グループですよね?」▼それにしても、歌手なのにいろいろなものに手を出し、政治・社会にまで影響を与えている彼女たちは一体この先何を目指しているのだろうか。一昔前の「モー娘」こと「モーニング娘」が完成度が高かったのに比べ全てが中途半端にしか見えない。歌も感動しなければ、ものすごく演技が上手いとも思えない(ファンのみなさん、ごめんなさい。刺さないで)。そもそも成人すらしていない未成年に「あれもこれも」とビジネスを押し付けるのはいかがなものか。▼さて、「総選挙」というシステムを考えた秋元は時代をとらえていると評価されている(たまたま読んだ読売で書かれていた)。果たしてそうだろうか。有権者が一人一票を投じる選挙と違い、1枚のCDを買うと「握手券」という一票が与えられるシステムで一人のファンが何十万もかけてCDを買い漁り、CDは破棄して投票権だけ得るシステムを「選挙」と呼べるのか。寧ろ金を持った奴が権力で幅を利かせる「株主総会」に近い。莫大な金が動く分、ビジネスマンとしては成功者なのかもしれないが▼そうすると、良いポジションを取りたいがために人気集めに翻弄し、「僕が一番にしてあげる」というファンに対し「破産しないでね」と笑顔で煽って答える彼女たちの姿が幼い「キャバ嬢」にしか見えないのは私だけであろうか。CDの価値って一体何だろうか。ファンが買うモノって一体何だったのだろうか。多くの疑問が渦を巻く▼思うに、多くのファンが買ったモノとは「達成感」だったのではないだろうか。一般市民の自分でも参加し応援することでお気に入りの子がどんどん名を上げられる。応援するにはお金がかかるが、親の気分で一体となって彼女を成長させていく「ゲーム」の一種の麻薬に魅了されてやめられない。それは以前取り上げたSNSのソーシャルゲームでも問題となっている「コンプガチャ」と同じだ。彼らの共有する目標は幻想でしかない▼AKBの「ガチの勝負のすさまじさ」について熱く語る男がいる。脳科学者の茂木健一郎氏だ。別に構わないが、そのノリで「ガチな努力をしていない」日本に喝を入れようとまでしてくれている氏の言葉は暑苦しいを通り越して見苦しい。一体彼はどうしてしまったのだろうか。有益なゲーミフィケーションとしてうまくメリットだけをとり入れていくのはいい刺激になるかもしれない。だが、「これはすばらしい」や「これを見習え」という感覚、それも幼い少女たちにおんぶにだっこで期待する思想になってくると、それこそ非常に視野の狭い思考になってしまうのではないだろうか。

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こうやって見ると誰が誰だかさっぱりわかりません。
「顔と名前を知っている人は3人くらいしかいない」と言ったら、いろんな人からよくバカにされます(笑)
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by komei115 | 2012-06-18 22:42 | Column

日日是思慮 その59

「ふっとその人が消えたんですよ。妙だなー、おかしいなー。そう思ってましたらねー、横を見たら・・・わっ!!」。天候が崩れ、ジメっとした日が続く6月は稲川順二の話なんかはうってつけだろう。夜の墓地にでる、いるはずのないもの。怖いけどついつい聞きたくなる怪談話。しかしながら、自分の死後をどうしようかと考える人は少なくない。その時、真っ先に浮かぶのはお墓のことではないだろうか▼昨年度、国民生活センターに寄せられた墓に関する相談は1769件と過去最多に上った。死んだ後のことなのに面倒なお墓の問題。第一、お墓も馬鹿にならないほどの値段をとられる。費用はおもに墓石の値段、永代使用料、管理費からなる。永代使用料とは墓の土地を末代まで使う権利を得るための費用で、所有権ではないので売買は不可。相場は地価の2~4倍といわれる。管理料は人件費、建物修繕費等の霊園運営・維持費用だ▼結局お金はどのくらいかかるのだろうか。霊園情報サイトの調査によると、墓石の平均購入額は約143万円(京都100万~東京200万)。全国の墓地の平均永代使用料は約58万円(岩手12万~東京115万)。管理費が年間6千円(山口1千円~神奈川1万2千円)。高い買い物だといえるだろうが、それでも墓地は利用者で溢れかえっている▼お金の問題と場所の問題。これを受けて新しい試みがなされている。現在、東京では8か所にある都立霊園が利用者でほぼいっぱいになっていることを受けて、遺骨を樹木の下に共同で埋葬する「樹林墓地」と呼ばれる新しい形態の墓所が多摩地区にある都立霊園に整備し、都は利用者の募集を来月から始めることにした▼芝生が敷き詰められた広さ800平方メートル余りの敷地にはコブシやツバキなどが植えられ、地下には遺骨を埋葬するための直径1メートル50センチ、深さ2メートル余りの筒状の施設が27か所に設けられている。しかし、何といっても驚くのは値段だ。利用料は1人13万円余りで、管理料はない。こうした「樹林墓地」は限られた敷地を効率的に利用できるほか、「土にかえりたい」などという要望など、埋葬に関する価値観の多様化を受けて、最近、民間の霊園を中心に広がっている▼合理化やビジネス、文化の変遷などいろいろな要素が混ざり合って「墓のあり方」が変わりつつある。「死後のことは自分で決める」。「死すらもお金で解決するのか」。墓に対する思いやニーズは多様になっていくことだろう。家制度の崩壊、そして核家族化が爆発的に進む一途をたどる今日、「個」としての単位で死を考える時代がやってきたのかもしれない。
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by komei115 | 2012-06-17 23:48 | Column

日日是思慮 その58

キリンの長い首。ゾウの長い鼻。アリクイの長い舌。ペリカンのくちばし。カメレオンの擬態・・・。地球上に住む生物たちはそれぞれ環境に最も適応した形で独自の進化を歩んできた。その特殊な力を謙虚に学ぶことで生まれてものがある。多用な生き物が進化の中で獲得した構造やしくみにヒントを得て、もの作りに繋げる「バイオミメティクス(生物模倣)」である。電子顕微鏡やナノテクノロジーの発展に支えられ、世界で関心が高まっている▼生物模倣の歴史は古い。1950年にスイスで服や毛にくっつく野生ゴボウの実の構造をヒントに、簡単に着脱できる面ファスナーが作られた。日本では90年代、高速で水中に飛び込んで魚を捕らえるカワセミにヒントを得て、くちばしのように先端を尖らせた新幹線「500系」を開発。これによりトンネルで高速で飛び込んだ時に発生する騒音の軽減に繋がった。それが2000年代に入ると、電子顕微鏡の性能向上により、より微細な生物の構造が調べられるようになった。一方で分子レベルで物質を扱うナノテクノロジーも進歩し、生物模倣の可能性はぐっと広まっていった▼近年注目されている生物模倣とは。一つ目には「ヤモリ」だ。彼らの垂直な壁すらも自由に動き回れる足の裏に注目した。ヤモリの足の裏には直系5マイクロメートルの剛毛が密生し、その先端は直径200ナノメートルの枝毛が数百本に分かれている。この毛が壁表面のわずかな隙間を埋めて、分子同士の引き合う力を利用してくっついているらしいことが最近の研究でわかってきた。そこにヒントを得た粘着テープ製造を手がける日東電工(大阪市)は「ヤモリテープ」を作った。テープの粘着性は格段に上がり、耐久力も増した。接着力はヤモリの8割にまで近づけたそうだ。これから用途を広めていくに違いない▼次に高速で泳ぐマグロを見てみる。何故彼らは魚類トップの高速スピードで泳げるのか。ヒレを収納できる珍しいボディも中身の筋肉量も特徴だが、今回は表面に注目する。その表面はぬるぬるとしており粘膜で覆われている。粘膜は高分子構造で、泳ぐ際に流体の抵抗を減らすことに繋がるらしい。このヒントをもとに日本ペイントマリン(神戸市)は、ヒドロゲルという高分子を船体の表面に塗って、海水の抵抗が減るかを実験したところ、塗料の膜が表面の水を捉えて船体の凹凸を減らし、摩擦を小さくする結果が出た。その後塗料の中に混ぜ込むことにも成功。低摩擦の防汚塗料LECはこれまで600隻近く使われ、平均4%の燃費改善に貢献した。今後も燃料節約や地球温暖化防止の一役を担ってくれることになろう▼最後に優雅に障害物をよけながら飛ぶハチの動きに注目。ハチは自身の周りに「パーソナルスペース」という空間を持ち、この中に入ってきた障害物を複眼で見つけて避けながら飛んでいることがわかった。これに目をつけた日産自動車は複眼の代わりとしてセンサーをつけたロボットカー「BR23C」を08年に試作。180度捉えるセンサーが障害物を感知すると瞬時に減速し、回転して衝突を回避する。加えて「並走」「接近」を取り入れ、将来の電気自動車の普及に合わせるのを目指している▼このような生物模倣の試みの加速を手助けするのが生物学や工学、多くの標本を保存する博物館だ。互いに手をとり研究や開発を深めていくことが今後更なる技術発展に繋がるだろう。自然の力は勿論のこと、進化・適応によって得た生物の力は偉大だ。科学はこれらの力を謙虚に学ぶ姿勢を徹底し、これから先自然と相乗し、共存できるような科学の発展を目指していってほしい。
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by komei115 | 2012-06-14 19:49 | Column

日日是思慮 その57

刑事司法への市民参加。日本でも平成21年から裁判官と市民が協議して量刑を決める「裁判員制度」がスタートしたが、当初は賛否両論だった。司法が国民に開かれ、市民が事件や裁判に触れることで事件の重みを知り、裁判官は自由な市民の発想で得られるものがあるということで評価される一方で強姦被害者のプライバシー、事件現場写真のトラウマなど様々な問題を孕むといわれ、実際に問題となるケースも出ている▼変わって海外の話になる。すべて市民によって決める「陪審員」という形での司法制度という歴史が長い米英両国。長く続けているだけに、結果としてこれまで様々な問題が内在してきたであろうこの二カ国では、近年インターネットの発達が新たな悩みの種になっている▼米アーカンソー州で昨年12月、ある死刑判決を破棄した。その理由は審理中に陪審員がツイッターで発信していたことによる。「選択をしなければならない。折られる心がある。我々は全員、大きな境界線を体現する」などという書き込み。陪審員は弁明したものの最高裁は「誰でも閲覧できる発言は公的なものであり許されない」として審理のやり直しを命じた。また、陪審員に選ばれたくがないためにフェイスブックを使って被告と友達になり、最板書侮辱罪として3日間服役した者も現れた▼英国ではフェイスブックを介して被告に評議の雰囲気などを伝えた陪審員が最板書侮辱罪で禁錮最長2年の有罪判決となった。他にも暴行事件の陪審員だった女性が審理中ネットで被告の前科を知り、他の陪審に教えたとして同じく裁判所侮辱罪で禁錮6ヶ月の有罪になって話題となったこともある▼こうした審理中に「自分の心境」をツイートしたり、フェイスブックで被告と「友達」という事例が米英で起きている中、スタートから3年を迎えた日本の裁判員制度でもこういった事件が起きないとは言い切れない。今のところSNSやインターネットの使用が問題となった例は表面化していないが、安心してはならない。日本は米英と異なり裁判員は選ばれた担当事件に関する報道について触れてはならないと裁判所が求めるような制約はないのだ。もしかしたら、すでに潜在的に事件として行われた可能性もある▼ただでさえレッテルや偏見でもって被告を見なければならない立場である裁判員は、公平に審議できるように情報には細心の注意を払うべきだ。気軽に情報にアクセスできるような今日だからこそ対応した制度をその都度施行していく必要があろう▼裁判はあくまで人が人を審理するのであるから真実を突き止めることはできない。「真実はいつも一つ」ではなく、そうであろうという判断をもとに決める。だからこそ出された証拠と明記された条文が絶対である理由だ。決して己の心情や物語をはさんではならないのだ。
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by komei115 | 2012-06-13 09:16 | Column

日日是思慮 その56

以前ブログで「宇宙兄弟」を紹介したが、アニメの方はだんだんと面白くなってきている。近未来の話だけに内容が現実性を帯び、もしかしたら2025年は似たような世界になっているのかもと想像するだけで楽しい▼「これからはロケットも民間企業が」。実際に、現実世界でもそんな時代に突入し始めている。先月末、米のスペースX社が開発した無人宇宙船「ドラゴン」が民間企業で初めて国際宇宙ステーションISSへの物資の輸送を果たしたのだ▼米政府はスペースシャトル引退後のISSへの輸送はNASAから民間企業に移管するという戦略を発表した。そして、その候補に「ドラゴン」とオービタルサイエンス社の「シグナス」の2機が選らばれていた▼「ドラゴン」は26日のドッキングに成功すると、物資を補給し31日に無事に地球海上に着水した。NASAが民間企業の宇宙活動の活性化を目指して投資しているCOTS計画のもとでの今回の任務は新たな時代の幕開けの歴史的な快挙であったといっていいだろう▼今後は地球低軌道への飛行士の輸送も民間企業に委ねる方針を打ち出しているので、大いに弾みがつこう。さあ、日本のJAXAも負けてられない。誰もが自由に宇宙の世界に参入していける。そんな時代に向けて先見の視野を広げていきたい。
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by komei115 | 2012-06-12 21:03 | Column