Fredericks soliloquy ~No.3 Kourakuen

この日は朝からご主人は浮かれていた。彼女が前日から家に泊まっていたからだ。
ちなみに僕は最初彼女に拾われた。そして、父さんと別れ一人で寂しいご主人のためを思って僕をプレゼントしたのだ。
僕はそんな彼女のためにご主人の世話役として頑張って働いてるのだ。
一人暮らしを始めて早7年目。人には一人暮らしの有意義さを上から語るものの、人恋しさには飢えているようだ。
昨夜はクリームシチューを、朝はサンドイッチを彼女のために黙々と作ってもてなす背中が全てを物語っている。
彼女に「もう主夫だね」と褒められ、「たいしたことないよ」というものの顔はにやけている。どこまでカッコつけたがるんだろう。この寂しがり屋さんが。
朝食を食べ、ゆっくりと準備をしていた。どうやら何処かに出かけるらしい。僕もついて行くことにした。
始めに近所の時計屋で止まっていた腕時計を見てもらった。 電池の問題じゃないらしく、修理に出さなければならないらしい。修理か、新しい時計か。どちらにせよ思わぬ出費にご主人は凹んでいた。
そのまま駅に向かう途中に自分が今月ツイてない事を彼女に告げていた。
それがまた薀蓄をひけらかしながら喋るのだ。薀蓄をひけらかすほどの愚かな所業はない。「私はバカです」と自ら言っているようなものである。昨夜の料理といい、そんなに天パーの芸人に憧れをもっているのか。
彼女もそんな話聞かなきゃいいのに。
電車に乗り、20分。着いたのは後楽園だった。 なんと彼女の御厚意で岩盤浴と温泉に入りに行くらしい。しかも無料で。
あれ。さっき今月ツイてないとかいってたばかりだよね、ご主人。
ツイてるじゃないか。十分。何甘ったれたこと言ってんだよ。感謝しろ、感謝。
今日の詩 ~冬の灯~
空気が澄み渡った冬の街に街灯が
キラキラと光っています
街の彼方此方でイルミネーションが
キラキラと輝いています
それらはとても綺麗なのですが
美しくはないのです
そんな時に私は火を思い浮かべます
ロウソクに灯った火
落ち葉に放たれた火
暖炉で燃え上がる火
時に儚げにゆらゆらと
時に勇ましくごうごうと
生命を燃やし
生命を灯す
畏れ大き生命の源
そこから生まれる光が
希望に満ちたその光が
何よりもまして
美しいと思うのです