青い果実の実る頃には

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読書から学ぶもの ~くちびるに歌を~

ネタばれ注意

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「拝啓」から綴られる言葉に込めた少年少女の想いは15年後どのように届くのだろうか。自分と他人が織りなす青春の荒波に揉まれながらも合唱を通して成長していく若者達の歌は、言葉は、輝いている。 



2008年に「百瀬、こっちを向いて」でデビューを果たした中田永一氏による、とある中学合唱部とその家族を描いた青春小説。2011年に出版され、2012年の本屋大賞にノミネートされている。

あらすじ
中学生二人の視点で交互に物語が進んでいく。舞台は長崎県五島列島にある中学校。Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)を目指す合唱部に、新たな顧問が赴任してきた。部員が増え、仲間割れが起き、Nコン間近だというのに不安は山積みのままで・・・。

なんとなく本屋で目にとまり、なんとなく買ってみた本。就寝前の読書にと思って読み始めたが、ついに一睡もできないまま一気に読み終えてしまった。気がつけば明け方の空に変わっていて、鳥が鳴き始めていた。私はすでに泣いていた。
田舎の中学生らしい言動や行動の数々がとても懐かしくてついついほくそ笑んでしまう。また、地元長崎の物語だからか読んでいて、九十九島や海からの潮風の匂い、木々からの木漏れ日、石垣、校舎、佐世保港などの情景が頭の中に鮮明に浮かび上がってくる。文章による的確な描写力と地理の取材力には驚かされる。
物語の方はというと一見よくある青春群像なのだが、喉仏が出て声変わりをしたり、乳房が膨らんできたりといった第二次性徴を迎える男女が家族や友人、異性との繋がりの中で私は何者であるかという問いと向き合う。そして、悩み、傷つきながらも「その時の精一杯の答え」を探していくところが深く踏み込まれていて物語を一層色濃いものにしている。所々に読まれる手紙が何を意味するのかが気になり、前後の物語中での心情との比較をしていくとさらに深い感動を味わうことができる。あくまでも「生徒主体」の枠から出ることなく、それでいて緻密に計算された物語の展開方法は見事である。
読後、小さな島の小さな物語に心が温かくなり、自分に手紙を出したい衝動に駆られてしまう。もちろん、アンジェラ・アキの歌を聞きながら・・・。
「拝啓 私さま」。さて、この言葉の続きにどんな想いを込めて文字を綴りだそうか。
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by komei115 | 2012-03-19 10:09 | Reading&Music