青い果実の実る頃には

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読書から学ぶもの ~国のない男~

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カート・ヴォネガット著/金原瑞人訳 NHK出版 2007年

氏の言葉は十分に危険。しかし、十二分にユニークで魅力が絶えることはない。驕れる心を鎮められる、珠玉の言葉が詰まった国のない男(ヴォネガット)の遺言書





『スローターハウス5』や『タイタンの妖女』で知られる二十世紀後半のアメリカを代表する作家のカート・ヴォネガットが残した最後の作品である。
爆笑問題の太田光の影響で読んでみた『タイタンの妖女』が面白く、以降ヴォネガットの次の作品を読みたいなと本屋に立ち寄ったところ、この『国のない男』の本の表紙がとてもお洒落で、中をパラパラ見るとアートも魅力的に描かれていて一目で気に入ってしまい即決で購入した。
短編集かなと思って読み始めて初めて気づくことがあった。この本は小説ではなく、エッセイだった。そして、私が読書にハマり始めた2007年にすでに出版され、「キノベス2007」にランクインし、翌年も文芸書トップ10に名を連ねていたらしいのである。それほど多くの人がこの本を手にし、読んでいたのだ。そう思うと、今さら本を購入して「ひゃっほー」とはしゃいでいた自分がみるみると情けなく映り、無知だった自分を呪いたくもなったのだが、読破後はその恥にも負けないほどの満足感に浸っていて、この本を机上に飾るとともにヴォネガットの他の作品を読みたいと言う欲に再び駆られることとなった。これが幸せでなきゃ、いったい何が幸せだっていうんだ。
もし、「カート・ヴォネガットってどんな人?」と聞かれたら私はこう答えたい。「『愛は消えても親切は残る』と言える人だよ」と。『国のない男』を読んで、氏は世界のユートピアを夢見るわけでもなく、絶望的な現実を見据えた上でユーモアを何より大切にする人だったと信じているし、氏のそういったブラックでアイロニカルな部分をユーモアで包んだアフォリズムが私の心を捉えて止まない。

「わたしは、わたしの孫と同世代の人々に心から謝りたい。これを読んでくれている多くの人々はたぶん、そのくらいの年だろう」
まるで自分の遺作が自分の孫の世代に読まれるであろうことを予見していたかのように書かれた言葉も、そこから続く言葉も全部踏まえた上で
「若者よ、この地球へようこそ。夏は暑く、冬は寒い。地球は丸く、水も人間も豊富だ。ジョー、ここでの寿命はたかだか百年くらいじゃないか。わたしが知っている決まりはたったひとつだ。ジョー、人にやさしくしろ!」と言えちゃう氏はなんて素敵な人だろうと思う。
独特の文学観、芸術観、そして人間観。その全てに心底憧れてしまうのだ。
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by komei115 | 2012-10-02 07:42 | Reading&Music