青い果実の実る頃には

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自然と科学 隠す場所と探す場所

最近のマイブームに「脱出ゲーム」がある。閉じ込められた部屋から色々な道具を探し、暗号を解読し、閉ざされた脱出口から逃げ出すというゲームだ。出題者側の手口に「なるほど」と舌を巻いたり、「こんなところに隠すなよ」とツッこんだりとこれがまたなかなかに面白い。なにより、閃いて試したことが正解だった時の快感はたまらない。

さて、話は変わって学術雑誌『Science』のデイリーニュースサイト「ScienceNOW」で紹介された研究記事を読んでその一つに関心を持った。人間は、どうやら隠すときと探すときとで違う場所を選ぶというらしいのである。
カナダのとある研究者たちは、隠れんぼのゲームを研究し、何かを隠したり探したりするときに私たちの脳が一体どのように機能し働いているのかを調べるために、初めてバーチャルリアリティを利用した。
そこで発見されたのは、不思議なことに人間は自分が隠した場所とまったく同じ場所を探すのではないということだ。
大学の心理学者たちは、現実の部屋で約100人のボランティアの協力を得て実験を始めた。部屋にはソファー、テーブル、絵画が設えてあり、部屋の隅のひとつは暗く、窓が1つある。人々は、それぞれ2分間で、中に入って部屋に70箇所以上用意してあるタイルの下の一つにカードを隠した。そして、同じように2分間で別の人たちが隠したカードを探した。当然のことながら、一度に入るのは常に1人である。
彼らはそれぞれ、隠すときと探すときで異なる戦略を用いることに気が付いた。例えば、多くの人は部屋の中央に対象物を隠すことを選択したが、その後で探す人々は部屋の隅を探した。この行動は研究者たちを驚かせることとなった。研究者らは隠すときと探すときに同じ戦略を用いることが観察されると予想していたからだ。
その後、カナダの心理学者たちは部屋をバーチャルで再現し、再びゲームを行った。ヴォランティアの人々には、室内装飾を変えたり、ドアや、窓や、家具などを動かすことを許可したが、ここでも、前回の実験と同じように隠すのと探すので異なる場所が選ばれた。例えば、彼らは暗い部屋の隅を探すことを選択し、窓に近い場所を避けたが、彼らは隠すときにはそのようにはしなかったといった具合だ。
なぜ人が、自分が隠す場所を探さないのかは未だ謎に包まれている。ひとつの仮説として、隠すことと探すことは、脳の異なる2つの部位が関係する行動であるというのがありうるが、彼らは今後この仮説を検証する新しい実験を行うだろう。

この現象に対するキーとなる発言をしている人がいる。イタリアのパドヴァ大学の一般心理学の教員で、、「Il Mulino」社出版の『ゲーム』の著者ヴァレンティーナ・ドゥルソ氏だ。
「探し手は、隠し手の心理の研究から出発するわけではありません。それとはまったく異なる性質のハンターのような態度で、その場をしらみつぶしに探す傾向があり、機械的で原始的です。隠れんぼで遊ぶ子どもは、単純な方法で視界から隠れようとする傾向があります。例えばベッドの下です。しかし、すでに遊び慣れた少年は、逆に、鬼が数を数えるドアの後ろに身を置きます。なぜなら、鬼の心理を分析して、普通ではなく探し手の考えの及ばない場所が最も安全だと想像するからです。要するに、隠す(隠れる)人は、子どもでもないかぎり探す人よりもずっと頭を使っていて、より当たり前でない場所を選ぶのです」
つまり、ものを探すときは原始的だが、隠すときは頭を使う。視界の中にあるけども、心理的には遠い場所に置こうとする性質があるのだと氏は説明する。

この研究はいろいろと興味深い側面を持ち、多様な応用が効くと予想される。例えば、リアルでもバーチャル行動が同じであるならば、鉄道の駅、空港、そのほかのテロリストの攻撃目標となるかもしれない場所、さらに、イラクやアフガニスタンのような開けた戦場を再現することだってでき、そしてこのことが、爆弾や、武器や、ドラッグの発見を容易にして、テロリズムや密輸との戦いに革命をもたらすコントロールシステムなるものが生まれるかもしれない。また、ゲームとしてもさらなる展開・開発が見えてくる可能性を多く秘めている。
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by komei115 | 2012-10-15 16:20 | Nature&Science