青い果実の実る頃には

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読書から学ぶもの ~瀬尾まいこを読む~

幸福な食卓
072.gif072.gif072.gif072.gif☆  8/10
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瀬尾まいこ著 2007年 講談社文庫


天国はまだ遠く
072.gif072.gif072.gif☆☆  7/10
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瀬尾まいこ著 2006年 新潮文庫


意外な切り出し。優しく繊細な描写。気が付くと話に引き込まれている自分がいる



瀬尾まいこは2001年に『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、その翌年の単行本で作家デビューを果たした。2005年に『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を受賞。2007年には同作が映画化された。

「冒頭の一文が凄いから」と友人に勧められて読み始めた『幸福な食卓』。
なるほど、確かに冒頭第一文で「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」という言葉には驚かされる。一体この家族に何が起きているのか気になってしまう始まり方である。みるみるうちに引き込まれて、あれよあれよと言う間に全てを読み終わっていた。
とある一家族の習慣は朝食を一緒に囲むことだった。だれがどんなに忙しくとも、朝食だけはきっちり顔を見合わせて食べる。そして、朝食の時間は誰かが家族に対して告白をする時間でもあった。
一見幸せそうな家族。しかし、蓋を開ければ家族はバラバラで、それぞれの心が軋み合っていた。歯車が狂ったきっかけは父親が起こした騒動にある。だが、それは家族にとっては必然の出来事だったと感じる。
父は父であることを辞めて勉強し直すと言いだし、神童だった兄は高校卒業後、大学には行かずに晴耕雨読の生活を送っている。母は母で夫の引き起こした騒動が引き金となって別居しているが、それでも家にはたまに顔を出している。主人公の佐和子は、自分だけは当たり前の道を進むんだとまじめに中学生活を送っている。しかし、そのまじめさは一種の神経質となって彼女自身を苦しめている。
この家族のどこに幸福があるのだろうか。だいぶ前からすでに幸福な食卓は失われていたのかもしれない。
だが、そのバラバラになった家族はそれぞれに切なさや苦しみを抱えながらもつながり、再生を目指していく。
この話は主人公である少女の一人称の視点で描かれているが、一見淡白な会話や説明文の中に心の機微の動きがよく表現されており、文は豊かな彩りを与えてくれている。
さて、幸福な食卓はどこにあるのだろうか。
人生には様々なことが起こる。楽しいこと、悲しいこと。家族と一緒に暮らしていればなおさらで、家族の人数分様々なことが振りかかる。それは荒波かもしれない。だが、波風立たない水の上よりはずっといい。ぶつかり合って、助け合って乗り越える。乗り越える度に、結束は強まって沈みにくくなる。それを家族の幸福と呼ぶのかもしれない。
どんなことがあろうと、それでも朝は必ず訪れる。そしてまた、当たり前のように食卓を囲まなければならないのだ。


二作目に上げた『天国はまだ遠く』。これは人生の再起の図る清爽な旅立ちの物語である。
これも優しい文章に目を奪われて、気が付けば物語は終わっていた。田舎の描写が細かく、取材かもしくは出身地がそうなのかと勘繰っていたら、あとがきで作者自身が丹後地方での教員生活をもとに書いていたことを知って納得した。丹後での生活があったからこそこの作品を書けたと氏は言う。自然に恵まれた素晴らしい場所でも自分自身がよそ者だと言う感覚、生活していても夢を見ているかのような感覚が作中に溢れている。いつまでも居たいのだけれど、いつかは出て行かねばならない。そう考える主人公の千鶴はまた作者自身でもあったのだろう。
ほんのりと心が温まる作品である。息を吐いて何かをリセットしたいとき、この作品は一役買ってくれるだろう。

私は氏の作品にもっと興味を持った。他の作品も是非読んでみたい。
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by komei115 | 2012-11-13 23:36 | Reading&Music